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”人生100年時代の生活保障論”を読みました


”人生100年時代の生活保障論”(2021年4月20日 初版第1刷発行)を読みました。

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著者は関西大学政策創造学部教授の石田成則先生。本を手に取ったきっかけはこちらです。

当然ながら面識はありませんが、社会保障審議会 企業年金・個人年金部会第21回に外部有識者として「公私役割分担の考え方と年金政策」お話しされる機会があり、このブログでも2022年1月に「人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~ 【第8章】老後所得保障における公私役割分担論」で取り上げていまして、この本には興味を持っていました。という背景です。

いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

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■はじめに

・少子化もそれだけコンパクトな家族で生活を支え、また生産活動が継続できることの帰結であり,一国社会経済の発展の証にもなる p1
・生産活動に従事する人口とそうでない人口の割合から,少子高齢化が前者に対して生活上の重しになるとしたら,それは新たなリスクの出現でもある p1


この導入部は超重要です。はっきり書かれているものは多くないのではないでしょうか。私は初めて見たと思います。
1ページ目で「これこれ!!!」とまで思えたのは初めてでした。


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■第1部 新たな環境における生活保障のあり方

・子ども数の減少は結婚した夫婦の子ども数の減少と,婚姻数字自体の減少によって引き起こされる p14
・(効果的な少子化)対策の第一として非婚・未婚化対策のために,若者を中心にその婚姻力を引き上げることが大切 p21


書かれているのは、
1.労働市場に対する公共サービスの展開:求職者や転職者の対するマッチング機会の提供や個別就業支援の強化
2.若年労働者の起業支援:ローンの充実
3.中小・零細企業に対する雇用促進助成金:給料補助の実施
ということで雇用や働く場です。いわゆる「子育て支援」が少子化対策の1つであることは認識していますけれど、少子化対策の柱は雇用なんです。この認識がずれてはいけません。


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■第2部 生活保障とファイナンシャル・プランニング

・第4章 公的年金の現状と課題 p33~
・図表4-5 2004年の年金改正に伴う年代別の給付と負担の変化 p42


いくら出所が日本経済新聞2003年のデータかつ「賃金上昇率2%で65歳時点評価」と書かれているとはいえ、「負担倍率」などというものを1935年生まれと1985年生まれで比べることに何の意味があるのでしょうか。平均寿命(平均余命)も社会の状況もまったく異なります。そもそも公的年金は老齢だけでなく障害・遺族も含めた保険です。この取り上げ方だけはほんま意味のないことですし、石田先生も意味不明の主張派側の立場なのか不安を感じてしまいました(すみません
この本の不満点は唯一ここでした。この本が大学の講義の教科書になっていないことを願うばかりですし、教科書になっているなら適切に学んだ学生がしっかりとつっこんでもらいたいとさえ思ってしまいました。


・(確定給付企業年金の)老齢給付による年金は雑所得として公的年金等控除の対象となり,実質的にほとんど課税されることはない p61

「規模の大きい会社が企業年金基金を有することが多い」という前提を書いておられるにもかかわらず、です。企業年金を年金(分割)形式で受け取ると、公的年金の老齢年金と合算して公的年金等控除です。現役期と比べれば課税が小さいのは間違いありませんが、国民健康保険料(後期高齢者医療の保険料)・介護保険料なども上がってしまう可能性もあり、「実質的にほとんど課税されることはない」は書きすぎではないでしょうか。


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■第3部 老後生活における健康と生き甲斐づくり

・老後生活の幸福度の要因 p97~


幸せの定義は人それぞれです。世界規模・国内規模・その人の規模、人と比べることに意味があると私は思っていません。自分自身や手の届く範囲の人が幸せかどうかがまず第一で、手の届く範囲の人の範囲が人によって異なり、究極的には自分自身や手の届く範囲の人が幸せになるために周囲にいる多くの人が幸せなほうが幸せになりやすくなる、ということではないでしょうか。
さまざまに知ったうえで、人それぞれ考えたいものです。


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「はじめに」で出てきた「コンパクトな家族」で何事も完了できる現代社会では「人を見たら消費者と思え」です。
これ実際には「人を見ると労働力というよりは消費者に見えてしまう」という権丈先生の言葉なのですが、多くの人が幸せであり続けるためにはお金がぐるぐるまわり続ける必要があります。その土台は社会保障・社会保険です。

大きな意味で、働いている人・働ける人・お金を動かせる人が、働いていない人・働けない人・お金を動かせない人を支える社会で、生活保障論を考えていく必要があります。
現在の社会の置かれている状況と制度をシンプルに知ることのできる本でした。本文は105ページですので読みやすいです。

 

細かい誤植です。
索引p134では「セカンドオピニオン」となっていますが、本文p83と用語解説p118では「セカンドオピニョン」となってました。増刷があれば修正されることでしょう。「お金にもセカンドオピニオンを」をキャッチコピーにしていますので放置できませんでした。

長文をお読みくださり、ありがとうございました。



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