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”WPP シン・年金受給戦略”読みました


”WPP シン・年金受給戦略”(2023年1月10日 第1版第1刷発行)を読みました。

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著者は社会保険労務士・DCプランナーの谷内 陽一さん
僭越ながら「おわりに」で伊藤も登場させていただいています。FPとして個別相談を対応している立場からお声がけくださいました。

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オンラインの会議に数回参加し、そうそうたるメンバーの方々のおられる中、最若輩ながら何度か発言させていただきました。
ちなみに念のために書いておきますが、今回ご紹介する本がミリオンセラーになったとしても私には何も入ってきません。谷内さんから食事の誘いくらいはあるかもしれません(笑)というイメージです。


いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。1つお伝えとして、発行前に原稿は確認していません。

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■はじめに
■終わりに

・引退間近の高齢世代の方や,老後資産形成に関心のある現役世代の方はもちろん,社会保険労務士やファイナンシャル・プランナー(FP)などの専門家、企業年金業務に携わる企業の総務・人事担当者や年金基金の役職員などの実務家,そして金融機関に勤めるあらゆる実務担当者にとって,本書の内容が少しでもお役に立てば幸いです p3


著者の谷内さんが普段講演される対象は一般生活者よりも金融・各種年金の関係者である傾向が強いと思っています。
この本も内容の踏み込み方はまさに専門家向けです。自らさまざまに調べて咀嚼できる人は深い理解につながると思いますが、一般生活者の方々はWPPという概念さえ知っておいていただければ十分に思います。
大事なのはいざその場面に遭遇したときやその場面のことを想定して検討する際に、専門家の意見を理解できる基礎知識だと思っています(私のポジショントークです)


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■第1章 就労・私的年金・公的年金の継投策「WPP」とは何か ~理論編
■第2章 公的年金・私的年金キホンの「キ」 ~年金の制度・受取り方・税制を知ろう
■第3章 シン・就労延長Plan ~失われた「野性」を取り戻す!

・マスメディア・専門家は悪いニュースしか取り上げない p9~
・これからは完投型から「WPP(継投型)」へ p12
・WPPモデルは「人生100年時代」に備えるうえで有効な手法 p19
・Column 老後生活費の実態 ~いわゆる「老後2,000万円」の虚実 p25~


そもそも「WPP」とは何ぞやの解説はここでは書きません。ぜひ谷内さんの文章でご確認ください。
 
研究会で私が発言させていただいた1つを書きます。
野球で例えるのは理解できる人が限られてしまうということです。

野球を知っていればめっちゃわかりやすいんです。サッカーに例えれば良いってわけでもないんです。でも、大半の女性や若い世代には通じない可能性が高いんです。
これはWPPという考え方の普及にとって強い足かせになるのではないかと懸念しています。「WPPという考え方」が普及することはめちゃめちゃ大事です。


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■第4章 シン・公的年金の受給Plan ~「繰下げ受給」で終身給付の厚みを増す

・半世紀も前からささやかれている「年金破綻」 p91
・公的年金は「保険」であり「土台」である p112~


公的年金保険のうち将来受け取る年金(老齢年金)の繰下げ受給がシンプルかつ重点的に解説されています。
公的年金保険そのものについては同じくWPP研究会メンバーの1人である大江さんの本が超オススメです。
”知らないと損する年金の真実”読みました


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■第5章 シン・私的年金等の受給Plan ~「年金」か「一時金」か
■第6章 就労・私的年金・公的年金の継投策「WPP」とは何か ~実践編

・さまざまな「継投」のバリエーション p142~
・個々人の状況に応じた柔軟性の高さは,一方で,意思決定のために多くの情報を要することを意味します p157


一般生活者にとって難易度が特に高いと思われる章2つです。
たくさんの人に読まれる記事、大ヒットする本にありがちな「1つの言い切り」ではありません。むしろ言い切れないんです。それは人それぞれ働き方や貯蓄の状況などが違いすぎるからです。
だからこそ、さまざまな「継投」のバリエーションが紹介されているのですが、この理解は間違いなく難易度が高いです。

また、専門家の端くれの立場としても「WPPモデルの効果検証」(p144~)として掲載されている表の取り扱いは悩ましいです。
もちろん考え方の紹介であることは理解しています。それでも65歳以降の高齢期35年間にわたる表ですので年齢も含めた家族(夫婦)状況の変化による支出の一定性の取り扱いや、貯蓄の取り崩しペース・用途など、実際の相談(生活)では悩ましい表だと思わざるを得ません。
これは否定的に書いているのではなく、本当に難しい話であることを読者の方々にわかっておいてもらいたい、そしてポジショントークにもなってしまいますが、実際に検討する際にはFPに限らず専門家に意見を求めてみてもらいたいという主張につながります。


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iDeCo(個人型確定拠出年金)・NISA(少額投資非課税制度)といった有利な制度は将来に向けて使うほうが良いというのは言い切りが容易です。(もちろんどのように使うのかはまた人それぞれ違ってきます)

でもこれらを含めて、どのように受け取っていくのが最善かは言い切れないものです。将来の不安ばかりが強すぎて若い時代や高齢期の前半にお金を適切に使えないのも変な話です。この面からもWPPの考え方を知っておいてもらうことは大事です。
お勧めの本なのは間違いないです。
 

谷内さんはこのブログでは勝手ながら過去に2回登場いただいています。
人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~ 【第10章】私的年金と税制 -租税の公平性・中立性の観点から-
年金シニアプランフォーラム2022「老後資産形成と高齢期資産管理の課題」を受講しました

長文をお読みくださり、ありがとうございました。



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