fc2ブログ

令和5年度税制改正大綱を独断と偏見の塊で書き出しました


2022年12月16日に自由民主党のサイトで公開されました。
令和5年度 税制改正大綱
毎年12/10ごろでして前回まで6年連続で公開時期にずれはありませんでしたが、今回は1週間弱遅かったです。原文はPDFで132ページです。

なお、この大綱はほぼ確定の内容であると言えますが、あくまでも現時点における改正見込みであって現時点においては確定していないものもありますのでご注意ください。
実際に改正された内容は財務省のwebにまとまっていますのでご参照ください。
各年度別の税制改正の内容


この記事では私の対応する個別相談で特に関わりそうな内容のみ、独断と偏見で抜粋します。

-----
第一【令和5年度税制改正の基本的考え方等】

引用p1
231220_01

税制改正大綱という税の方針を示す文章の中に前提として「2,000兆円に及ぶ個人金融資産」と書かれると、そこへの課税が何か考えられているのか!?と勘ぐってしまいます。もちろん現状はそんなこと考えられないのですが、前段に書くべき情報なのかどうかがわからなくなります。


・引き続き、更なる税負担の公平性の確保、働き方への中立性の確保、世代間・世代内の公平の実現(中略)といった観点から中長期的な税制の検討を進める p2

たまにしか税のことを考える機会のない私ですが、「公平性・中立性」といった表現が使われると反応してしまいます。所得控除という仕組みがある限り、公平性・中立性は不可能だと思っています。税率の低い人と税率の高い人で恩恵が異なるからです。
なので究極的には収入の多い少ないに関わらず、収入×一律の税率を課し、担税力やその人の状況に応じて税控除(所得控除ではない)、そして収入が多くない方々にはマイナスの税控除(給付金)という突飛なところまでいかないと公平性・中立性にはならないのではないかと感じる次第です。


---
■1.成長と分配の好循環の実現

(1)NISAの抜本的拡充・恒久化 p3~

制度の詳細はこちら↓の記事もご参照ください。
NISAがようやく最終形態に!?2024年からの情報を現状で整理

・(中略)これにより、年間投資上限額の合計は360万円となり、英国ISA(約335万円)を上回る規模が実現する p3

英国は2017年以降、年2万ポンド(1ポンド=167.5円で335万円)が恒久化されています。
<参照> 「英国における個人の中長期的・自助努力による資産形成のための投資優遇税制等の実態調査」報告書 2016年6月 日本証券業協会(PDFファイル注意)

日本の2024年以降のNISAは年360万円は最大で5年です。単年度では「英国ISAを上回る規模が実現する」というような表現が望ましいのではないでしょうか。


・投資未経験の方や、今は投資の機会に恵まれない方については、賃上げ等を通じた所得の底上げが将来的な投資につながることも期待される p4

NISAは大事な仕組みです。今回で最終形態と呼べるほどだと思います。でもこの大前提を忘れてはいけません。

---
■4.経済社会の構造変化を踏まえた公平で中立的な税制への見直し

(1)個人所得課税のあり方 p14~

①極めて高い水準の所得に対する負担の適正化

・株式の譲渡所得のみならず、土地建物の譲渡所得や給与・事業所得、その他の各種所得を合算した所得金額(基準所得金額)から特別控除(3.3億円)を控除した金額に、22.5%の税率(中略)令和7年分以降の所得税から適用 p14

この文章がおもしろいのは前後にNISAの文言があることです。「極めて高い水準の所得」を得ている方々ってNISA使っておられる(または使う予定がある)のでしょうか…。

②諸控除の見直し

引用p14
231220_02

ここに今後どのような手が加わるのかは注視しています。

③私的年金等に関する公平な税のあり方

「退職金や私的年金の給付に係る課税」
「令和3年度税制改正大綱で(中略)必要性について指摘」
「各種私的年金の共通の非課税拠出額や従業員それぞれに私的年金等を管理する個人退職年金勘定を設けるといった議論も参考に」
など気になる文章がありますが、最後は「具体的な案の検討を進めていく」ですので、まだまだ先のように感じています。②と合わせて注視が必要です。

④記帳水準の向上等

・小規模事業者の半数以上が帳簿を手書きで作成(中略)個人事業者の場合、正規の簿記の原則に従った記帳を行っている者は約3割 p16

まじですか…


(2)資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築 p16~

・高齢世代に資産が偏在するとともに、いわゆる「老老相続」が増加するなど、若年世代への資産移転が進みにくい状況

引用p16
231220_03

はい…。


①相続時精算課税制度の使い勝手向上

前提の結果がここにつながるのは個人的に納得しにくいです。

②暦年課税における相続前贈与の加算

過去3年から過去7年になれば余計に「一緒やん…」と思われてしまって資産の移転が進みにくいのでは…


---
■5.円滑・適正な納税のための環境整備

(1)適格請求書等保存方式の円滑な実施について p18~

・インボイス発行事業者の登録申請件数が令和4年11月末現在で約200万者 p18
・インボイス発行事業者となる免税事業者に対しては、持続化給付金によりこれまで以上に手厚い支援を行う p19

きちんと申請している事業者には支援もあると。面倒だからとか小規模事業者いじめとか言い訳が苦しくなってしまいますよね。


(6)防衛力強化に係る財源確保のための税制措置 p21~

・法人税、所得税、たばこ税について、以下の措置を講ずる(中略)施行時期は、令和6年以降の適切な時期

ニュースで出ていました件、掲載ありました。


-----
第二【令和5年度税制改正の具体的内容】

【個人所得課税】
■1 金融・証券税制
(国税)
[延長・拡充]

引用p23
231220_04

これを前提として、ちょっと笑ってしまうくらい仮称を使った解説が続きます。
・特定累積投資勘定(仮称)
・特定非課税管理勘定(仮称)
・特定非課税累積投資契約(仮称)
・特定累積投資勘定基準額(仮称)

とりあえず、2024年からのことは現状こちらの記事を参照ください。この記事は全体の確認なので、NISAに特化していません。ご了承ください。


---
■3 住宅・土地税制
(国税)
[延長・拡充等]

(3)空き家に係る譲渡所得の3,000万円の特別控除の特例(中略)適用期限を4年延長 p33

現時点で2023年末までですので、2027年末まで延長ということになります。


(4)低未利用地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除(中略)適用期限を3年延長 p33~

こんなのあったのですね。恥ずかしながら知りませんでした。現時点で2022年末まで終了でしたが、2025年末まで延長ということです。


---
■4 租税特別措置等
(国税)
[延長・拡充]

引用p35
231220_05

当たり前ですけれど、こういうのもきちんと書かれているわけです。


---
■5 その他
(国税)

引用p36
231220_06

雑損控除の繰越が3年から5年に変更。こういうのも良いのは間違いないのですが、あくまでも所得控除なので所得がある人がありがたい仕組みでしかありません。諸々考え始めるとよくわからなくなってしまいます。

その他、(14)高等学校等就学支援金、(16)介護給付、(19)健康保険の出産一時金などにも「所得税を課さない」と記述があります。このあたりは当たり前のことですけれど法律はしっかり記載が必要なことがよくわかります。
ただし、今回は「所得税・個人住民税を課さない」との記述ではありませんでしたし、他に「個人住民税を課さない」という記述もありませんでした。よくわからないです。


(地方税)
<国民健康保険税> p41

引用p41
231220_07

上がります。2割軽減や5割軽減も上がるのですね。


-----
【資産課税】

■1 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築 p41~

(1)相続時精算課税制度
・現行の基礎控除とは別途、課税価格から基礎控除110万円を控除できることとする

別途?

(2)相続開始前に贈与があった場合の相続税の課税価格への加算期間等について
・相続の開始前7年以内(現行:3年以内)(中略)令和6年1月1日以降


---
■2 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置 p42~

(1)教育資金
・3年延長

現時点で2023年3月末までですので、2026年3月末まで延長ということになります。

(2)結婚・子育て資金
・2年延長

同じく現時点で2023年3月末までですので、2025年3月末まで延長ということになります。


---
■3 租税特別措置等 p34~
(国税)
[延長・拡充等]
<登録免許税>

231220_08

FP検定的にチェックポイントになる3年延長です。

その他、固定資産税・都市計画税(p48~)では平成28年熊本地震や平成30年7月豪雨関連の特例措置延長が掲載ありました。


-----
【納税環境整備】
■2 加算税制度の見直し p104~
(国税)

引用p104
231220_09

無申告とかありえないです。じゃんじゃん厳しくしてもらいたいです。


---
■3 その他
(国税)

(9)税理士等でない者が税務相談を行った場合の命令制度の創設等 p108~

①不正に国税若しくは地方税の賦課若しくは徴収を免れさせ、又は不正に国税若しくは地方税の還付を受けさせることによる納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防止
③1年以下の懲役又は100万円以下の罰金

仮に適切な納税を手伝えているのだとしても税理士資格の無い人が個別具体的な税務相談を受けることは当然にダメです。今回は悪質なのをより明確にという意図でしょうか。


(地方税)
(3)相続税に係る固定資産情報の通知の電子化 p110

引用p110
231220_10

官公庁と自治体の連携は大歓迎です。


-----
【検討事項】 p116~

■1 年金課税

税制改正大綱は最初にここを見に行く私です。最大の関心はここなのですけれど動きがありません。引き続き注視していきます。


-----

一般生活で大きな話はとにかく今回NISA(少額投資非課税制度)です。でも、諸々実際のオペレーションは今後です。金融機関の対応なども要確認です。


この記事は私がFP3級資格取得講座を受け持っていることが継続の理由です。こうしてまとめた記事が後々自分の助けになるんです。

なお、令和4年度の税制大綱を取り上げた記事はこちらです。
令和4年度税制改正大綱を独断と偏見の塊で書き出しました。

長文を読んでくださり、ありがとうございました。



コメント

非公開コメント

トラックバック