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図表でみる世界の年金 2019年版【第10章21/44】デンマーク


図表でみる世界の年金OECD/G20インディケータ(2019年版) 2021年11月12日初版第1刷発行 を読みました。

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他国の状況を知りたい目的で購入しましたので第10章「図表でみる世界の年金2019:国別プロフィール」から国別で紹介しています。全44か国あります。

前回の記事はこちら → 図表でみる世界の年金 2019年版【第10章20/44】スイス
21か国目はデンマークです。

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■デンマーク p272-278

65歳超人口が現役世代人口の46.2%に達する日本の公的年金給付費 対GDP比は10.2%。
65歳超人口が現役世代人口の34.9%のデンマークは公的年金給付費 対GDP比は8.1%。

平均寿命は日本(84.0歳)より2歳と少し短い80.7歳です。


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受給要件

受給権は保険料拠出ではなく居住期間。満額受給のためには、2025年7月までは居住40年、以降は15歳から受給開始までの期間のうち9/10の居住期間。短い場合は比例調整。
受給開始は2018年時点で65歳、2022年にかけて67歳へ引き上げられ、2030年には68歳、その後は平均余命の伸長と直接リンク。

要件が居住期間ということは社会保険ではなく社会保障ですよね。このあたりは国としての保障の考え方ですので、各国の治外があって当然ですが、であれば尚更一律に比較することに意味があるのか毎回わからなくなります。


年金額の算定方法

・公的年金

基礎年金
加算年金(経済的に最も貧困な年金受給者に対して支払われる所得審査付き)


・基礎的制度

平均所得額の約18%に相当する月6237デンマーク・クローナ(1デンマーク・クローナ=17円として)=約10.6万円=約127万円/年。逆算すると平均所得額は約707万円。
収入が32250デンマーク・クローナ=約55万円(平均所得の3/4)を上回ると、個人単位で所得審査が行われ、上回る所得額の30%が減額。

収入が60万円とすれば上回るのは5万円で、その30%は15000円。基礎的年金10.6万円から15000円減額されて9.1万円ということでしょうか。収入がしっかりあってもたったそれだけしか減額されないのですね。
なお、日本はどれだけ収入があっても基礎年金が減額される仕組みはありません。


・特定階層向け制度

単身者の加算年金の満額は月6728デンマーク・クローナ=約11.4万円=約137万円/年。個人所得71200デンマーク・クローナ=約121万円を超える部分の30.9%が加算年金から減額。

夫婦または同棲世帯は年39996デンマーク・クローナ=約68万円。
パートナーが公的年金を受給している場合、世帯の合計所得のうち142800デンマーク・クローナ=約243万円を超える部分の16%分が加算年金から減額。
パートナーが公的年金を受給していない場合、世帯の合計所得のうち142800デンマーク・クローナ=約243万円を超える部分の32%分が加算年金から減額。

経済的に特に困難な状況にある場合、資力審査付きで17200デンマーク・クローナ=約29万円の補足的な支給を受けることができる。保有する流動資産が86000デンマーク・クローナ=約146万円に満たない最貧困層に限定。
年6万デンマーク・クローナ=約102万円までの就労所得は所得審査で考慮されない。

基礎・加算・補足の年金額は直近2年間の平均所得額の変動(賃金上昇率)に合わせて毎年変動。


・ATP(強制貯蓄方式の付加年金)

デンマーク労働市場付加年金(ATP)は雇用労働者の約90%が加入。自営業者は任意加入。積立型の終身給付で加入者が早期に死亡した場合は遺族に一時金。

掛金額は就労時間だけで決まる定額。2017年時点で、フルタイム労働者は年3408デンマーク・クローナ=約58000円で2/3を事業主、1/3を被用者が負担。

単純に40年就労で計算しても約230万円の積立にしかなりません。40年の運用でどれだけ増やせることになるのかわかりませんが、小さいです。


・職域制度

完全積立型で労働力人口のうち約85%が加入。自営業者は対象外だが類似の仕組みあり。
掛金率は10~18%の範囲で設定。障害・遺族・老齢・重篤な傷病といった各種社会的リスクを保障し、広範囲の給付を支給。老齢(終身年金)のみが積立方式、他の給付は拠出される掛金によってまかなう。世代内や世代間で所得移転は行わない。

積立型で終身年金という仕組みは恐ろしすぎると感じてしまいます。制度の持続性は本当に大丈夫なのでしょうか。


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キャリアの変動への対応

・受給開始を遅らせる場合

就労時間が年750時間(月62.5時間=週15.6時間)以上ある場合、2回まで合計10年間繰下げ可能。

増額率などの記載はありませんでした。


・育児(休業)の場合

最大52週が対象の出産・育児給付を受給している期間はATPへの拠出額が倍になり、加入者1/3・政府と基礎自治体が2/3を負担。
母親は産前4週・産後14週を受給、父親は出生後14週のうち2週間分を受給。その後32週(52-4-14-2)は父母で分け合ったり共有も可能。


・失業の場合

省略。


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個人所得税と社会保険料

・年金保険料・掛金と老後への備えに対する課税の扱い

私的年金への掛金は上限7万デンマーク・クローナ=約119万円が税額控除。
給付には課税定率40%を適用。年金プランの資産運用による収益には15.3%課税。

税額控除すごい額!と思いましたが、受給時に課税40%ってものすごいですね…
実際には単純に71.4万円分の積立(47.6万円が税)ってことですよね。


・年金受給者への課税

特別な税控除や税クレジットは存在しない。


・年金所得への課税

特別な非課税措置なし。
ATP・職域年金はETT(拠出時非課税・運用時課税・給付時課税)。


・年金受給者に賦課される社会保険料

社会保障はすべて税収でまかなわれており、社会保険料は存在しない。

こちらの記事によると、デンマークは消費税25%で食料品への軽減税率なしです。


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年金制度モデル化の結果:デンマーク
・2070年に74歳から受給開始

平均所得額の半分のいわゆる低所得者の所得代替率は1を超えています。

完全積立型の職域年金も含めたうえでの給付水準や所得代替率の取り扱いというのもかなり悩ましいのではないでしょうか。


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なお、各種webサイトではデンマーク通貨をデンマーク・クローネと記載されていることが多いようです。この記事では本書に合わせてデンマーク・クローナとしています。

今回も夫婦・同棲・同居など、家族のあり方によって調整額が変わる仕組みがありました。日本の老齢年金で違ってくるのは加給年金だけです。諸々考えさせられます。

 

次回、図表でみる世界の年金2019【第10章22/44】オーストリアです。


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