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図表でみる世界の年金 2019年版【第10章7/44】オーストラリア


図表でみる世界の年金OECD/G20インディケータ(2019年版) 2021年11月12日初版第1刷発行 を読みました。

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他国の状況を知りたい目的で購入しましたので第10章「図表でみる世界の年金2019:国別プロフィール」から国別で紹介しています。全44か国あります。

前回の記事はこちら → 図表でみる世界の年金 2019年版【第10章6/44】カナダ
7か国目はオーストラリアです。

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■オーストラリア p238-245

65歳超人口が現役世代人口の46.2%に達する日本の公的年金給付費 対GDP比は10.2%。
65歳超人口が現役世代人口の27.7%のオーストラリアは公的年金給付費 対GDP比4.3%。
平均寿命は日本(84.0歳)より約2歳短い83.2歳です。


公的年金給付費が日本の約4割である対GDP比4.3%。

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受給要件

所得審査のある老齢年金 Age Pension の受給開始年齢は2023年までに67歳へ引き上がる。2018年時点では65歳6ヶ月。
事業主強制拠出の退職年金保証 superannuation guarantee の受給開始年齢は1964年6月30日以降生まれ(2019年時点で55歳)で60歳。

所得審査のある老齢年金は日本でいうところの基礎年金(所得審査なし)であり、退職年金保障が厚生年金というイメージと受け取りました。でも所得審査があるので生活保護に近い印象もあります。


年金額の算定方法
・拠出建て制度

退職年金保証は1992年に導入。私的年金制度の一種との位置づけ。掛金(強制拠出)率2025年7月以降、賃金額の12%。
月収450オーストラリアドル(1オーストラリアドル=85円として)=約38000円未満には拠出義務なし。上限は四半期において54030オーストラリアドル=約459万円なので月あたり約153万円。日本でいえば健康保険の標準報酬月額設定ですね。

年収37697オーストラリアドル=約320万円未満の場合、最大の500オーストラリアドル=約43000円のマッチング拠出が政府より受けられる。マッチング拠出の年収上限は52697オーストラリアドル=約448万円で最小20オーストラリアドル=約1700円。

日本でマッチング拠出といえば自己(加入者)拠出を意味しますが、諸外国は異なります。政府や企業に出してもらえるお金です。
私的年金の位置づけの通り、賦課額ではなく積立額のように見えてしまいます。仮にそうであれば適切に運用されていることを願うばかりです。


・特定階層向けのセーフティーネット

所得審査のある老齢年金は日本における基礎年金にあたるように感じましたが、実際には生活保護に近そうです。現金給付も「エネルギー支援金」というものがあり、さらには医療・家賃・医薬品にも優遇制度があります。

2018年9月時点での年金支給とエネルギー支給の合計は単身者で年額23823.80オーストラリアドル=約203万円、夫婦で年額35916.40オーストラリアドル=約305万円。国内の税引前の男性週当たり平均総所得の41.76%相当額が下回らないよう必要に応じて追加が実施。年に2階の額改定。単身者は夫婦の額の66.33%相当額。

収入免除領域という基準額を超過すると減額。2週間分で単身者は172オーストラリアドル=約15000円、夫婦で1人あたり152オーストラリアドル=約13000円。


年金受給年齢になっても働くことを奨励する「就労ボーナス」があったり、資産審査もあり、やはり生活保護ですね。
資産基準は単身者で465500オーストラリアドル=約3960万円、夫婦で594500オーストラリアドル=約5050万円。約38%の受給者が資産審査で減額あり。

収入や資産を適宜適切に政府が把握できている状況というのを国民が受け入れているということでしょうか。私は日本でもこういった仕組みを適切に導入されてもらって問題ないと思っていますが、一部の報道・メディアや声の大きな人たちが大反対されることが目に浮かびます。


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キャリアの変動への対応
・早期受給開始の場合

退職年金は57歳から受給可能だが、1964年7月以降生まれ(2019年で55歳)の場合は60歳。減額率は記載がありませんでした。


・受給開始を遅らせる場合

繰下げできると書かれていましたが、年齢や率の記載はありませんでした。


・育児(休業)の場合
・失業の場合

いずれも特段の措置はないと書かれています。


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個人所得税と社会保険料
・年金受給者への課税

高齢者・年金受給者税額控除 SAPTO
単身者は年収32279オーストラリアドル=約274万円以内であれば2230オーストラリアドル=約19万円。年収50119オーストラリアドル=約426万円以上で適用なし。
夫婦は1人につき年収28974オーストラリアドル=約246万円以内であれば1602オーストラリアドル=約14万円。年収41790オーストラリアドル=約355万円以上で適用なし。

所得控除ではなく税額控除。良いと思いました。


・私的年金所得への課税

文章量が多く難解でした。低所得退職年金税額控除 LISTO、税制非優遇掛金、多くの額を受け取る場合には加算税、退職段階給付など、実に仕組みが多岐に渡ります。このあたり国民は事前に準備することなく、受け取るその時になって仕組みのまま受け入れるのか、自分で検討したり専門家に相談したりしながらより良い方法を探る人がいるのか、専門家の端くれとして気になったポイントです。


・年金受給者に賦課される社会保険料

日本でいうところの公的医療保険料や公的介護保険料の負担について記述はありません。全額税での運営なのでしょうか。


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年金制度モデル化の結果:オーストラリア
・2063年に67歳から受給開始

これまでの6か国にはない形です。生活保護に近い老齢年金をこの図に含めて良いのか私にはわかりません。
それがある関係で、平均所得の半分くらいの人に比べて8割くらいの人の給付水準が低くなっています。所得の多い人たちにもそのまま減っていくのかと思いきや、おそらく負担(拠出)に応じて増えています。
本文中に再分配機能という言葉もありましたが、このあたりは疑問を感じます。


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オーストラリアでも夫婦という家族構成に対して単身者とは別のさまざまな基準が設けられていました。いわゆるジェンダーフリー的なことに熱心と報道などでは感じさせる欧米先進国において、どのように受け取られているのか気になるところです。


余談です。
以前にオーストラリア在住の日本人さん(配偶者がオーストラリア人)から、日本に戻っての住宅購入について相談の問い合わせをいただいたことがあります。
私の対応できることをお伝えし、最後に相談報酬のことを説明した際、「住宅ローンを組むのだから、金融機関から仲介手数料がもらえるでしょ?依頼者(相談者)からお金(報酬)を取るなんて信じられない。住宅に限らず他の相談でも同じ。オーストラリアではありえない」このように言われ、結局相談依頼はなくなりました。
数年どころではないもっと前のことですから今はどうかわかりません。オーストラリアがこんな仕組みなので日本も同じでないといけないとは思いませんが、とにかく感じたのは相談の前提が何らか金融商品の営業・提案・販売だとしたら、今回の公的年金や私的年金も含む受け取り方や資金計画などの内容で金融商品と直接的に関係のない相談の場合、誰が対応するんでしょう?役所のみ?

 

次回、図表でみる世界の年金2019【第10章8/44】スウェーデンです。



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