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年金シニアプランフォーラム2022「老後資産形成と高齢期資産管理の課題」を受講しました


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年金シニアプランフォーラム2022「老後資産形成と高齢期資産管理の課題」

講演資料はリンク先ですべて確認できます。かなり手厚い内容です。
知り合い2名(大江さん・谷内さん)と興味ある演者2名(駒村先生・上田先生)が登壇者に含まれていましたので、興味深く受講させていただきました。

いつも通り、勝手ながら私の視点で気になったところを取り上げます(敬称略です)

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<第一部>

■老後資産形成とDC年金の課題
小野 俊樹(厚生労働省年金局 企業年金・個人年金課長)


厚生労働省資料ならではのデータたくさんです。
・DC導入の課題 p8
・骨太の方針2022 など(資産所得倍増プラン) p15
・証券投資は必要ない理由(アンケート結果) p17
このあたりは特に多くの人に見てもらいたいです。


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■後期高齢者の資産管理 実際と課題 ―家族機能の変化と長寿リスクの理解
池田 惠利子(日本成年後見法学会 副理事長)

・自身は法律家ではない
・事例 本人108歳・娘90歳・孫71歳
・人生100年時代だが、意識と経験が付いていかない

・平均という考え方はくせもの
・個人差が大きいのが高齢者の世代
・普段の生活はつましいのに、健康食品・健康器具にどかんとお金を出してしまう高齢者

・事例に共通しているのは高齢者自身からSOSは出ない
・お金はあっても生活に困っているケース
・適切に関わるキーパーソンの不在
・地域包括支援センターとケアマネジャー


社会保障や医療・介護のセミナーであれば機会の多い内容も、老後資産形成や確定拠出年金が主たる題目でこの内容を聴ける機会は珍しかったです。
とにかく困ったときは、もしくは誰に聞いて良いかわからないような高齢者に関することは、地域包括支援センターに行ってみる。これに尽きます。

1つだけ残念だったのは「2000万円問題」を誤った認識のままお話しされていたこと(p7)。もちろん一般的にそのように広まってしまっているのは致し方のないことですし、それを取り上げてくださることには問題は感じません。ただ、専門分野が違うとしても発信力のある専門家さんですから、他の演者の方々が講演後に適切なフォローを入れてくださっていることを願うばかりです。


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<第二部>

■「日本における老後のための資産形成に向けた基礎的条件に関する研究」について
西岡 隆 (年金シニアプラン総合研究機構 審議役)

・老後資金を見積もることのむつかしさ p12


すべてはこれです。


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■座談会「我が国における老後資産形成と高齢期資産管理の条件整備について」
座長 駒村 康平(慶應義塾大学 ファイナンシャル・ジェロントロジー研究センター長/経済学部 教授)


■老後資産形成と高齢期資産管理の課題
瀧川 一(ティー・ロウ・プライス・ジャパン株式会社 グローバル・マルチ・アセット部門 ソリューションズ・ストラテジスト/ポートフォリオ・マネジャー アジア太平洋地域)

・企業型DC加入者は、年齢に応じた資産配分の自発的な変更を必ずしも実践できていない模様 p2
・バランス型含んでないので株式比率は実際には8-9%増える

・資産配分を検討する際、日本は公的年金が手厚めなので米国より株式低めでも良い


この研究会の発端は発表者の所属先さんだそうです。

p2とp4は、これまで見たことのないグラフでした。70歳や80歳を超えても資産配分として株式は40~30%ほど保有しておくことが(平均的には)望ましいということで理解しました。
ただ、発表者の立場上「ターゲット・デート型ファンド」推しなのは仕方のないことなのですが、日本ではまだ真っ当な商品がありません。ぜひ悩ましいほどに良い商品を出していただきたいです。


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■老後資産取り崩しに関する包括的・多角的な検討 -確定拠出年金の検討を契機として-
上田 憲一郎(帝京大学 経済学部経営学科 教授)

・寿命に合わせて資産寿命も伸ばす必要があり、退職後も運用が必要
・さまざまに課題はあり資産形成には不向きだが資産の取り崩し期として毎月分配型を再評価や再位置づけする必要があるのではないか
・包括的な老後資産のマネジメント(イメージ) p11


取り崩し期の話、昨今は定額売却・定率売却など仕組みが整ってきています。これらには一切触れることなく「毎月分配型の再評価」をおっしゃっていたので少し心配になりましたが、短い時間では話し切れない内容があったのかもしれません。

ちなみに私としては上田先生といえばこれです。
<過去参照記事> 人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~ 【第11章】企業と退職給付制度との関わり


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■企業型DCにおける制度的対応 高齢期の資産形成を後押しする仕組みの拡充に向けて
島村 暁代(立教大学 法学部国際ビジネス法学科 教授)

・本調査でわかった課題 p2
 1)老後のためにどの程度の額の資産を準備する必要があるか、具体的な金額を考えたことがない人が多い
 2)企業が用意する退職給付制度や定年・継続雇用・再雇用制度についてわからない人が多い
 3)資産運用に向けた取組みが活発ではない/ 運用への関心が低い

・主体的に運用できる人 ← 情報提供・継続教育
・運用に積極的になれない人 ← 制度的介入が必要

・人のための制度は使われないといけない。使われることで改善される。


制度的介入の幅を広げるほどに本来あるべき理想の姿、自ら勉強して自らの判断で主体的に商品を選択して運用から離れることに対して、もどかしさと悩ましさを切々と話してくださいました。個人的に今回のセミナーで最も共感しました。


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■企業型DCの教育実態と課題
大江 加代(株式会社オフィス・リベルタス 取締役/NPO法人確定拠出年金教育協会 理事)

・研修の実施(過去3年以内)17年ずっと6割で変わらない
・加入者の認識、継続教育は最大でも14.5%
・事業者はやっている、加入者は受けていない。ギャップに驚いた。
・オンライン受講は受講認識にならない


安定感抜群の大江加代さんによる発表です。
いかにして関心を持ってもらうのか。運用がどうのではなく、そもそもの制度や福利厚生をしっかり知ることがきっかけとして大事だと思っていますが、それを実践するとなると時間も手間も費用もかかるので本当に悩ましい問題でしかありません。


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■老後生活設計の「可視化」に向けた課題と展望
谷内 陽一(第一生命保険株式会社 団体年金事業部年金推進室 副部長)

・年金ダッシュボードは大事だが、とらわれるのは良くない
・WPP p7
・見える化はゴールではなくスタート


WPP本家本元の谷内さんによる発表をきちんと(といっても座談会ですから短時間ですが)聞かせてもらったのは初めてです。(1対1でお話ししたり、複数人でのオンラインミーティングでは何度かお話しさせてもらっています)
1時間とか2時間の講演を別の機会でぜひ経験したいものです。


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■公私年金の新しい連携
駒村 康平

・21世紀生まれは人生100年
・運用しないならしないでリスクはある
・神経経済学からのアプローチ p7
・年齢とともに判断することが複雑化、反対に年齢とともに認知機能・判断能力は低下
・金融と福祉の連携(きんぷく連携)

・「2000万円騒動」年齢によって管理能力が落ちることを認識するという大事なところが伝わらなかった。
・各種議論の前提は人間像をどう設定するのか。自立?脆弱な生身の人間?
・設問で「わからない」をなぜ選ぶのか、これを研究している


座長として超安定の仕切りを見せてくださった駒村先生。僭越ながらさすがのひと言です。
「神経経済学」という新しい用語を知れました。複雑の定義は難しく人それぞれなのですが、できるだけ複雑なことにならない資産配分であってほしいと日々相談をお受けするなかでは感じます。


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まとめでのお話から1つ。

池田氏より、高額な健康器具を購入した高齢者が営業担当から受け取っていた説明メモが出てきた。そのメモが(悪い意味で)とてもわかりやすかった。
これを受けて駒村先生が金融もわかりやすくとおっしゃっていましたが、悪質業者は業法無視、効能・効用に科学的根拠のないことを言い切るなど、わかりやすくなって当たり前です。いわゆる詐欺の切り口です。
金融はそうはいきません。わかりやすいと思っても独自の資料は使えませんし、丁寧な説明は労力がかかりすぎ、収入・収益につながりにくくなります。金融に限らず、まっとうな内容の説明・理解は時間がかかるんです。

この悩ましさ、伝わりますでしょうか。簡単な話ではありません。


最後に。

今回の内容は自己完結を最終目的にしているように感じました。介護をはじめとした公的なサービスを除けば専門家を頼る視点はどなたからも出てこなかったです。
金融は関わる人が多すぎて、自ら極限までシンプルに使いやすくなることはごく限られた一定の人にしか不可能だと思っています。でも、10年前に比べれば極限までシンプルになった制度や商品は存在しています。
それらを適切に勧めてくれる専門家を活用する。専門家を探す。これも選択肢です。私のポジショントークで締められました。

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こんなにも有意義な3時間半もの内容を無料で東京まで行かずオンラインで視聴できるなんて、すばらしい時代になったものです。ありがたいことです。


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