”人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~”(2021年1月20日 初刷第1刷発行)を読みました。
日本年金学会創立40周年を記念して編集された書籍で、第Ⅰ部として公的年金制度が計7章、第Ⅱ部として私的年金制度が計6章、それぞれ別の専門家の方々による執筆です。とても1回の紹介記事で書けるボリュームではありませんでしたので1章ずつ記事にしています。ついに今回が13回目の最終回です。8回目からが第Ⅱ部の私的年金制度編です。
前回の記事
第12章 企業年金の資産運用 -株式投資の推移とコーポレートガバナンス、ESG等の課題への対応-いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。(一部、敬称略です)
-----
■第13章 将来生活設計と年金制度 -全く新しい将来生活設計と年金制度への新アプローチ- p229~247
原 佳奈子(
(株)TIMコンサルティング 取締役/
(社)企業年金・個人年金教育者協会 副理事長)
1.年金制度を将来生活設計から考える意義
・
社会保障制度改革国民会議報告書(2013年8月6日) p231
・
第6回社会保障審議会年金部会(2018年11月2日) p231
・「自分自身の場合はどうなるか」ということをしっかり把握することが重要 p231-232
2.将来生活設計と年金制度の活用
・(1)受給開始時期の選択(繰下げ制度の活用) p236~
3.ライフデザインから老後のプランニングへ
・資金計画を含めた老後のプランニングにモデルケースは当てはまらない(中略)大事なのは「自分の場合はどうなるか」ということ(中略)「自分ごと化」して考えてみることだ p239
・老後に向けた資産形成は、「運用」というよりは、自分の年金資産の「管理」と考えるほうが良いのではないか p241
4.老後資産形成と年金制度
5.「将来生活設計と年金制度」を考える際の課題
・3 広く理解を促す新たな体制の必要性--年金広報のあり方 p246~
・
社会保障審議会年金部会における議論の整理(2019年12月27日) p246
6.まとめ
※ 注釈・参考文献は
こちら。この章は全30ページのうちp29-30の2ページ分です。
-----
これまでの研究者の方々による論文調な文章から一転、普段から一般向けの文章を書き慣れておられる執筆者ならではの読み進めやすい内容です。
「自分(自身)の場合はどうなるか」「自分ごと化」それぞれ複数回登場します。まっとうな情報発信において用語やチェックポイントは挙げられても結局は人それぞれなので、一択でこれをやれば正解!という方法は存在しません。資産運用・不動産投資や働き方・副業など、これをやれば正解!という人がいたらそれは単にその人の都合で何かを売りたいだけの人で間違いありません。
ほとんどの人にとって遠い将来に生活していくお金のベースになるのは一生涯受け取れる老齢年金に間違いありません。それを知らずして上乗せとなる企業年金・iDeCo(個人型確定拠出年金)・つみたてNISA(少額投資非課税制度)などを考えるのは不毛とまでは言いませんが遠回りですし、その他の金融商品や不動産投資なんて触れるまでもありません。
企業年金・iDeCo・つみたてNISAであれば、公的年金保険を仮に理解できていなかったとしてもまだ大きな問題になりにくい制度です。その他の仕組みで大きな金額を動かす機会は可能な限り避けたいものです。
引用です。
老後資金準備を40代など中高齢になってから始める時代ではなくなり、20代から40年かけて行う時代となった p232
この部分だけは個人的に好きになれませんでした。確かにiDeCoやつみたてNISAは20代からでも始められます。でも「老後資金」という位置づけではないと感じます。
iDeCoは税軽減の結果としての将来資金形成、つみたてNISAは住宅資金や教育資金にもなりえる「お金の置き場所」の1つです。
本文中に紹介のあった「管理」は、目的を老後に限定せず「お金の置き場所」としてとらえてもらうほうが若い世代であっても理解が進みやすいのではないでしょうか。
今回の本を踏まえて、2021年10月22日にシンポジウムが行われ、その概要がこちらの記事でまとまっています。
・第4章
公的年金財政・第6章
賦課方式公的年金における積立金の運用と資金循環構造・第3章
労働市場の変遷と厚生年金保険のあり方・第13章 新たな将来像と年金制度の在り方(今回)
・第10章
公私の年金制度の役割分担に関する歴史的考察・第11章
企業と退職給付制度の関わりこれらの内容の登壇者が取り上げられています。ご参考になりましたら幸いです。
全13回の紹介記事はこれで完了です。とても良いアウトプットの機会をいただきました。
皆さま、公的年金保険のことを適切に知りましょう。
コメント