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人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~ 【第10章】私的年金と税制 -租税の公平性・中立性の観点から-


”人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~”(2021年1月20日 初刷第1刷発行)を読みました。

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日本年金学会創立40周年を記念して編集された書籍で、第Ⅰ部として公的年金制度が計7章、第Ⅱ部として私的年金制度が計6章、それぞれ別の専門家の方々による執筆です。とても1回の紹介記事で書けるボリュームではありませんでしたので1章ずつ記事にしています。今回が10回目。8回目からが第Ⅱ部の私的年金制度編です。

前回の記事 第9章 私的年金制度を取り巻く環境の変化と課題


いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。(一部、敬称略です)

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■第10章 私的年金と税制 -租税の公平性・中立性の観点から- p175-193
谷内 陽一第一生命保険(株) 団体年金事業部 課長)

1.租税の公平性・中立性を踏まえた私的年金税制の再構築を

・私的年金税制の現状および課題を、租税体系から説き起こして分析・検証するとともに、眼下の社会経済情勢の変化を踏まえた私的年金税制のあり方と今後の方向性について考察 p175


2.年金税制の理論的検討

・公的年金・企業年金・個人年金の三者は、老後所得保障としての目的・機能は共通している。しかし、一口に「年金」と言っても、これらの制度上の性格・性質は著しく異なる p175-176
・私的年金の「外部積立」および「事前積立」という2つの特性が、私的年金税制を他の税制とは異質なものにしている様子がうかがえる p178
・私的年金では(中略)わが国のみならず主要諸外国では支出税体系に基づく出口課税が広く採用(中略)主要諸外国の現実の税制をみても、支出税を基幹としている国家は皆無(中略)私的年金税制については(中略)支出税的な要素を例外的に取り入れ、給付時まで課税を繰延べる出口戦略を採用することが現実的な選択 p180-181


3.わが国および海外の私的年金税制

・図表2 わが国の私的年金税制の概要 p182
・図表3 主要諸外国の私的年金税制の概要 p184


4.年金税制の課題および改正の方向性

・(19)87年の税制改正において、公的年金給付の所得区分が給与所得から雑所得に変更されるとともに公的年金等控除が新設され、企業年金給付にも同様の措置が講じられた p185
・3 運用時の課題 -特別法人税のあり方 p187~
・企業年金を含めた私的年金は公的年金等収入から切り離すべきである p190


5.むすびにかえて

・給付時課税の徹底は、先行研究でも過去数十年にわたり同様の指摘が繰り返されてきたものの、現在もなお課題の解消には至っていない p191


※ 注釈・参考文献は他の章とは異なりこちらには掲載がなく本文最後に記載があります。

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谷内さんは一度事務所までお越しくださったことがあり面識があります。WPP論の本家本元です。
<参照リンク> 人生100年時代 『長生きリスク』に備える年金の「WPP」ってなあに?

谷内さんから発信される文章は過去の歴史的背景、現在の各種比較などデータが明らかで、議論の前提として多くの方々に手に取ってもらいたい存在です。
たまにツイッターで話題になる特別法人税を含めて、話題になりやすい企業型DC(確定拠出年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の将来税制について不安を感じてしまう人は今回の章を読んで基礎知識を得たうえで投稿をお願いしたいものです。
<過去参照記事> 確定拠出年金のデメリットとして特別法人税は挙げられているが、確定給付年金のデメリットとして特別法人税が挙げられているケースを見ない


毎年の税制改正大綱で最後の「検討事項」に必ず登場する「年金課税」。最新の令和4年でも、まだまだ手が入りそうに感じないです。

でも谷内さんがまとめてくださったこれまでの各種提唱にも興味深いものがあり、このあたりから大きく逸脱しないものが選ばれるのではないかと僭越ながら感じてしまいます。

長く働くことが当たり前になっている現代社会および将来の社会において、収入だけでなく過大な資産も含めて公平性のある(そして複雑すぎない)税制になっていてもらいたいものです。

 

谷内さんは生活経済研究所長野さんでコラムを書いておられます。一般に読みやすい文章としてお勧めいたします。


そして最後に、いつもの私の主張を置いておきます。
<過去コラム> 年金という用語は公的年金保険だけに使って欲しい

「私的年金・企業年金」と書くから一般にはややこしいと思われるのではないでしょうか。
退職一時金は退職金、企業年金は分割受取退職金です。その他はぜひリンク先を参照ください。


<次回> 第11章 企業と退職給付制度との関わり


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