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人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~ 【第8章】老後所得保障における公私役割分担論


”人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~”(2021年1月20日 初刷第1刷発行)を読みました。

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日本年金学会創立40周年を記念して編集された書籍で、第Ⅰ部として公的年金制度が計7章、第Ⅱ部として私的年金制度が計6章、それぞれ別の専門家の方々による執筆です。とても1回の紹介記事で書けるボリュームではありませんでしたので1章ずつ記事にしています。1~2週間に1章を取り上げる予定で今回が8回目。今回から第Ⅱ部の私的年金制度編です。

前回の記事 第7章 公的年金制度への共感を高める年金教育の在り方


いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。(一部、敬称略です)

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■第8章 老後所得保障における公私役割分担論 p138-155
石田 成則関西大学 政策創造学部 教授)

1.公私役割分担論の理論的な整理

・2004年改正で、給付率固定型から保険料水準固定型へ梶を切ったのであれば、後者(公私年金を併せて一定の所得代替率を確保)の考え方に基づき、公私年金で一定の所得代替率確保を目指すべきである。そのために、自己責任、自助努力に委ねるだけでなく、一定の政策誘導もいる p138-139

・中小企業に着目すれば、正社員に対しても十分な退職給付を提供していないケースやそもそも一時金以外、企業年金制度を導入しておらず従業員が未加入なことも多い p142


2.家計からみた公私年金の連携 -ライフ・サイクル仮説に基づく考察-
3.私的年金の普及促進策 -海外事例を参考にした具体策-

・企業年金などの器に所得の一部を拠出可能な仕組みを設け、税制優遇の恩恵をあまり受けない低所得者を中心に国が掛金の一部を補助するやり方がある p146

・理論的には私的部門に公的な役割を移譲することに功罪あるものの、特に費用面の考察が重要である。税制優遇措置による税収の損失に加えて、受給権保護のための費用や指摘年金市場の規制費用が発生する p151-152


4.これからの公私年金の役割 -公私年金による所得代替率の確保-

・このような年金政策を実施することで、将来的には全所得階層に向けてより一定の所得代替率を確保すべきである p154


※ 注釈・参考文献は他の章とは異なりこちらには掲載がなく本文最後に記載があります。

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いやー、正直言って難しい内容でした。

公的年金保険と私的年金の組み合わせによる最終目的が「将来的には全所得階層に向けてより一定の所得代替率を確保すべき」なのであれば、単に基礎年金部分の保険料アップ(保険料率アップ)による給付額アップ(給付率?アップ)を進めること一択に感じてしまいました。
読めば読むほど、たくさんの候補がある私的年金をこねくり回して有効活用・有意義なものにしようとがんばるよりもほとんどの人が対象になりますし手っ取り早いしコストも少なくて済むとしか感じられない私がいます。

この章は老後所得保障に特化してますから、ここでの公的年金保険は将来の生活費の最低限を確保する役割での議論です。自助努力による上乗せは人それぞれ自己責任でという自由度を先進国として維持するという意味合いなら現状で問題ないでしょうし、今以上に企業に一律負担を求めるのも違うでしょうし、人材の定着・確保のための企業年金(福利厚生)であれば企業間競争として差別化があって当然でしょう。
企業年金が導入されていない中小企業勤務でiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入していない人や、個人事業主などでiDeCo・小規模企業共済を使っていない人は単に上乗せを求めていない属性であると判断されても仕方ないとしか思えないんです(すみません

なので繰り返しになりますが、各種私的年金の制度を整理したり手直ししたりするよりも「将来的には全所得階層に向けてより一定の所得代替率を確保すべき」なのであれば、負担が増えたとしても公的年金保険(の基礎年金部分)を手厚くする方が圧倒的に優れていると感じる次第です。


ちなみに、個人的には私的年金という表現がどうしても好きになれません。
<過去参照コラム> 年金という用語は公的年金保険だけに使って欲しい

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あと、現時点における制度の優劣を考えるとiDeCo(個人型確定拠出年金)は最大限にお勧めしたい仕組みですが、個人的に所得控除は好きじゃないです。

多く稼いでいる人(所得税率の高い人)のほうが制度利用の効果が大きい(税還付が多くなる)のはなんか違うと思うんです。制度利用者には一律に定額の上乗せ(補助)があるという仕組みが理想だと考えています。月5000円・月23000円・月68000円いずれであっても上乗せ1万円というようなイメージです。これだとみんな月5000円しか利用しないのではないかと思われるかもしれませんが、運用益非課税が維持されるならこれで十分でしょう。


こうして議論があることは大歓迎ですし、私もいろんなことを考えられるのでありがたいきっかけです。

 

今回の石田教授の論文一覧も見つけました。
2021年4月に「人生100年時代の生活保障論」という著書も出しておられるようで興味深いです。


<次回> 第9章 私的年金制度を取り巻く環境の変化と課題 -諸外国の私的年金制度からの示唆と今後の在り方-



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