fc2ブログ

人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~ 【第1章】不確実性と公的年金保険の過去、現在、未来


 ”人生100年時代の年金制度 ~歴史的考察と改革への視座~”(2021年1月20日 初刷第1刷発行)を読みました。

 211103_01

 日本年金学会創立40周年を記念して編集された書籍で、第Ⅰ部として公的年金制度が計7章、第Ⅱ部として私的年金制度が計6章、それぞれ別の専門家の方々による執筆です。とても1回の紹介記事で書けるボリュームではありませんでしたので、1章ずつ記事にします。(1週間に1本ずつ取り上げる予定です)


 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。(一部、敬称略です)

-----
■第1章 不確実性と公的年金保険の過去、現在、未来
 権丈 善一(慶應義塾大学 商学部 教授)

1.将来不安という人間の恐怖を制御してきた制度の進化

・(19世紀末)貧困に陥る不安を緩和して、統治の安定を図るために、国がいくつかの制度を作っていくことになる(中略)社会保険は、防貧機能を持つ自助の強制の制度であると解釈できるゆえに、資本主義社会、生活自己責任が掲げられる市民生活の中でも、費用負担者たちへのぎりぎりの説得に成功し、国境を越えて一気に普及していった p5


2.公的年金保険の制度設計
3.1954年改革 --日本の公的年金の原点を創る

・定額部分と報酬比例部分の2階建ての年金を構想することにより、公的年金保険の中で、富裕層から中・低所得層に所得を移転する、所得再分配が組み込まれたのである p7
・社会経済状況の不確実な変化に対して5年に一度のチェックを行い、それに相応した形で、負担のみならず給付のあり方も見直していくという、他国と比べて、かなりメンテナンスが行き届いた年金制度が誕生した p11


4.国民皆年金へ
5.1985年改革 --基礎年金の導入

・たとえば第3号被保険者である女性の夫が2人分の保険料を負担しているという認識は、夫側にはまだ薄いようである(中略)第3号被保険者は、1994年度1,220万人をピークに2019年度830万人まで大幅に減少(中略)これからも急速に減少していくと見通されている p21


6.1994年、2000年改革における支給開始年齢の引上げ

・しばしば年金論議が乱れるのは、基礎年金問題は国庫負担の財源調達問題であることを理解しないものが参入するからである p23
・長らく建設的な年金議論を妨害してきた彼ら(支給開始年齢の引上げを言う論者と年金の世代間不公平を言い続けてきた論者)の共通点は、制度の正確な理解を苦手とするというところにあるということなのだろう(中略)いわゆる「支給開始年齢の引上げ」は、世代間の格差を拡大する愚策であるため、政策の選択肢からとうの昔に外されている p25


7.2000年年金改革の挫折から2004年改革へ

・今の世代が適用拡大を進めることができなかったために将来の生活保護の受給者が増えるとすれば、将来時点での租税で現在の低い生産性の企業を守っていることになる。正当性を見いだすのは難しい話であろう p29
・将来の不確実性に対して不安を抱くのは人間の本性であり、それが公的年金保険という制度を生み、同様の理由から、これを攻撃して不安を煽ることにより、政治的、経済的な利益を得ようとする者たちも出てくる p31


※ 注釈・参考文献はこちら。この章だけで全30ページのうち9ページを占めます。

-----

 トップバッターは今回も権丈先生です。このブログで圧倒的ナンバーワンの閲覧数を誇る「ちょっと気になる社会保障 増補版(最新はV3)」の著者です。

 この本のp133図表59に出てくる戦後のハイパーインフレ「ここでいったい何が起きたのか」の部分が今回のp9に具体的な数字をもって解説されています。改めて衝撃的な倍率です。仮に現代において同じことが起こった場合にどうなるだろうかと想像してみようと思いましたが、やはりわけがわかりません。あの時代を成人として経験した世代の強さは想像できるものではないのかもしれません。


 端的に32ページで、でも相当深く歴史と背景がつづられています。とにかく公的年金保険(公的年金制度)に関して情報発信する立場にある人(特にメディア関連の方々および政治家)は今回のような歴史・背景を最低限押さえていてもらいたいです。あおられた情報だけを基にしてあおられた情報を書く悪循環を本当にやめてもらいたいんです。引用ばかりで申し訳ありません。大事な内容が盛り沢山です。

 一般の人はここまで読まなくても問題ないです。正直難しいです。
 第1には知らないと損する年金の真実、第2にはちょっと気になる社会保障(V3)、そのうえでこの本です。
 情報発信に携わる皆さまにおかれましてはすべて必須です。本当によろしくお願いいたします。

 

 高いですけどオススメです。


 <次回> 第2章 長期就労と年金制度

---

 参考までに1年前の「人口減少社会での社会保障のあるべき姿」から権丈先生の内容をご紹介しておきます。
 【序章】共通基本認識


コメント

非公開コメント

トラックバック