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”民主主義のための社会保障”読みました


 ”民主主義のための社会保障”(2021年2月4日発行)を読みました。

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 著者は一般社団法人未来研究所臥龍代表理事で上智大学総合人間科学部社会福祉学科教授の香取 照幸さん。
 香取さんといえば「教養としての社会保障」です。2冊目の著書ということで興味深く手に取りました。


 今回もいつも通りアウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルで記事にします。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

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■はじめに
■終わりに

・社会保障はこの国の経済を支え、民主主義を支えています(中略)社会保障の現場を支える優秀な人材の確保や政策研究を担う良質な研究者の養成は容易ではありません p291-292


第1部 社会保障の基礎
■第1章 社会保障に何ができるのか

・社会保障は社会的弱者や低所得者など「特定の人たち」のための制度、いわゆる「福祉」ではありません。社会保障は「すべての人」のための制度です p17


 社会保障は「すべての人」のための制度であり、保障と書きながらも経済の根幹なんです。
 私が常々書く言葉としては、経済と社会保障は表裏一体・一蓮托生です。これを学ぶことのできる本です。


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第2部 到達点から考える ~ポスト社会保障・税一体改革の課題
■第2章 社会保障・税一体改革の総括

・社会保障の世界はマクロとミクロの風景の差が非常に大きい世界 p24
・英語には「少子化対策」という表現はありません(中略)ファミリー・ポリシー(家族政策)とかファミリー・アンド・チルドレン・ポリシー(家族・子ども政策)と言うのです p35
・産業という視点で見ても、社会保障は大きな可能性を秘めた成長産業分野です。社会保障費の負担が経済成長を妨げているといった「成長の阻害要因論」から、もういい加減卒業しなければなりません p47
・全世代型社会保障の真の意味 p69~


■第3章 年金をどう維持していくのか

・公的年金は「保険」である p86~
・人生100年時代の年金 ~「世代内」再分配を提案する p104~


■第4章 医療・介護改革は避けて通れない

・規制緩和、制限医療の導入は医療・介護費の要請に寄与しない p118~
・健康寿命は科学的ではない p141~
・日本の公的医療制度は奇跡 p152~


■第5章 家族支援の拡充

・図表5-1 2040年までの人口構造の変化 p155
・柔軟で多様な現物給付 p166~
・企業も家族支援策の受益者である p170~


 医療費や介護費が過去最高というようなニュースを毎年見るじゃないですか。
 高齢者ばかり恩恵を受けて現役世代の負担が…という印象にしかならないと思うのですけれど、高齢者が恩恵を受けた結果の「お金」って最終的に誰に行ってるのかという視点を考えてみてもらいたいんです。

 医療費であれば医療関係者ですよね。医療関係者とは医師・看護師・薬剤師などだけでなく事務系や関わる出入り業者の方々みんなの売上であり給与になるわけです。
 介護費も同じです。介護職にあるのは現役世代です。介護用品メーカーで働いているのも現役世代です。これらの売上であり給与になっているんです。

 お金はぐるぐるまわっているんです。恩恵を受けているのは高齢者とだけ言い切って良いのかという話なんです。
 給与を受け取った人が消費すれば、健康保険料・介護保険料を負担している現役世代で働いている人の勤務先の売上になっているんです。売上になれば給与にまわります。
 

社会保障費の負担が経済成長を妨げているといった「成長の阻害要因論」


 これがいかに不毛な表現か理解が進むと思うんです。社会保障に関連する業種は成長してるんです。そして、その業種に勤めている人たちがいることで社会全体では消費が増えるんです。ぐるぐるです。


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第3部 経済・財政をどう立て直すか
■第6章 日本再生の基礎条件

・負担の先送り p186~
・需要を増やすのであれば、保育や介護の充実(中略)低所得の多い保育や介護の待遇改善と人材確保にも役立つし、所得再分配の効果もあり、非正規に苦しむ母子家庭の助けにもなるでしょう p213
・社会保険もきちんと適用して能力にふさわしい処遇をする。それができないような、「付加価値」を生み出せないような企業・経営者には市場から退出してもらう。「成長につながる競争」とはそういうことなのではないでしょうか p225
・日本の地方経済(消費)を支えているのは、地域によっては県民所得の20%、対家計最終消費支出比で見れば25%を超えている公的年金給付 p235


 医療や介護だけでなく保育も社会保障の1つです。医療関係は医師や看護師などの専門職の給与は一般平均より高そうですが、介護や保育って違いますよね。もっといえば教員や国家公務員・地方公務員などといった方々も平均的には給与がもっと高くなることでより優秀な人たちが集まる社会のほうが良いと思うんです。思うんです(わざと繰り返しました。

 公的年金保険は現金給付なので扱いが微妙です。特に老齢年金は多くの資産を持っていても受け取れます。受け取った年金が消費に回ってくれれば良いのですが、他に資産が多くある人たちにとっては貯蓄(預金)になってしまうだけです。この社会保障給付は意味がありません(厳密には意味がないことは無いのですが消費にまわらないという点です)。だからこそ高齢期における「世代内再分配」が重要で、これからしっかり進んでくれることを願うばかりです。


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第4部 民主主義のための社会保障
■第7章 ガラパゴス日本「精神の鎖国」

・現代の福祉国家における社会保障の機能とは、かつての救貧院や施療院のような「救貧」を目的としているものではありません。その機能の中心は、社会の中間層の貧困化を未然に防ぐ「防貧機能」にあります。この「分厚い中間層」こそ、安定的な消費=需要を生み出すコア層 p288


 救貧と防貧の考え方を知っていること社会の仕組みを理解するうえで、ほんまに大事です。皆さま、ぜひとも。


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 真っ当な内容でかつ手に取りやすい身近な社会保障の本というのは多くないように思います。
 個人的には前著「教養としての社会保障」のほうを先にお勧めしたいです。約4年前の本ですので、新しいデータや今の世の中の仕組みのことも含まれているのが今回の本という位置づけです。

 


 最後にこの本はハードルが高いなと感じられましたら、この2つの記事をお勧めします。


 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


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