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人口減少社会での社会保障のあるべき姿【第2章】社会保障給付費はGDPの従属変数


 2020年3月24日に日本医師会から発表された医療政策会議報告書の平成30・令和元年度報告書「人口減少社会での社会保障のあるべき姿」を読みました。

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 全7回の記事を予定しています。今回が3回目です。前回の【第1章】最近のマクロ経済理論と政策の考え方はこちら

 本当は報告書を読んでいただくほうが良いのですが、よほどのもの好きでなければ読み込むのはしんどいと思います。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。


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■第2章 「千三つ官庁」対「現業官庁」―経産省と厚労省の医療・社会保障改革スタンスの3つの違い
 二木 立(にき りゅう)(日本福祉大学名誉教授)

・経産省の各種文書は、社会保障給付費等をすべて名目額のみで示していました。ただし、なぜか研究開発費や防衛費については、名目額と対GDP比の両方を記載(中略)厚労省は、最近は、社会保障給付費は対GDP比で評価すべきであり、それらは今後も社会的に負担可能と主張 p16

・学問的には、厚労省の立場が正しいと言えます。なぜなら、社会保障給付費は「独立変数」ではなく、GDP(経済成長)の「従属変数」であり、今後のGDPの伸びの違いで大きく変動するから p17


・2017年に公表されて大きな反響を呼んだ、経産省若手プロジェクト『不安な個人、立ちすくむ国家』は「健康で長生きしたあとで、人生最後の一ヶ月に、莫大な費用をかけてありとあらゆる延命治療が行われる現在」を批判(中略)事実は、死亡前1か月間の医療費は国民医療費の3%にすぎず、しかもこれには心筋梗塞や脳卒中等による急性期死亡の費用も含まれています p17

・経産省は「生活習慣病」=個人責任の立場から、個人アプローチのみを主張(中略)最近の厚労省は、個人アプローチと社会環境改善(社会的)アプローチとの併用を提唱 p18


・経済産業省の改革案の最大の問題点は、今後の医療・社会保障給付費が高騰すると無責任に危機意識を煽る一方で、予防医療の重視と終末期医療の見直しにより、医療費を大幅に減らすことができるため、今後の負担増は不要との「根拠に基づく」ことのない主張(私からみるとデマ)を繰り返すことにより、今後、人口の高齢化と医療技術の進歩により着実に増加する医療費の財源確保の方策から国民・政治家の目をそらすことだと考えています p18

・財政、国民経済、医療・介護とその財源に関する確固とした認識を共有し、それについて国民・患者・政治家の理解を得るための努力を不断に続ける必要がある p18

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 元データをきちんと把握することの意義を改めて知る必要があります。

 うがった視点を持たないスタンスで書けば、経済産業省さんは厚生労働省さん視点のデータを知らないんだと思います。知らないから手元にあるデータだけで重要と思われる(ポイントのずれた)内容(二木先生による「デマ」)を発信してしまう。
 仮に知っていて発信しているのであればポジショントークが過ぎます。医療費は国を左右するほどの大きなお金が動きます。言葉を選ばなければ悪質、ただそれだけです。

 これは私たちの日々の生活でも同じことが言えます。
 「公的年金保険は破綻する」これはデマです。きちんと学んでいない、学ぼうともしていない自称専門家が発信してしまっているんです。
 かなり割合は低いですけれど、これを知っていて発信している人は悪質です。詐欺と呼んでも良いです。こういうことと同じにおいを感じます。


 大前提が揃わないと議論になりません。残念ながら私たちが普通に生活するなかで最も身近に接するであろう新聞・テレビ・雑誌などの大衆メディアは社会保障について事細かなデータや歴史を示してくれません。見出しに使えそうな浅い内容だけが抜粋され発信されてしまうんです。ほんま悩ましいです。


 2年前の「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」から二木先生のパートを2つご紹介しておきます。
 ・【第2章】無邪気な(naive)誤り
 ・【講演録5】最適保障と財源

 <次回> 第3章 我が国の医療政策の変遷と一体改革、そして今後の課題


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