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人口減少社会での社会保障のあるべき姿【序章】共通基本認識


 2020年3月24日に日本医師会から発表された医療政策会議報告書の平成30・令和元年度報告書「人口減少社会での社会保障のあるべき姿」を読みました。

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 プレスリリースはこちら。
 「人口減少社会での社会保障のあるべき姿~『賽(さい)は投げられた』のその先へit's our turn~」平成30・令和元年度 医療政策会議報告書まとまる


 2018年4月発表「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」の次の報告にあたります。前回はブログ記事13本にもおよび、重厚・濃厚さがものすごかったです。今回は記事7本の予定でボリュームは大きくありません。でも濃厚です。

 正直に書きまして社会保障の仕組みや考え方・本質を学ぶのであれば2年前の報告書が良いです。今回は最新の状況に照らした内容だと読み取りました。
 本当は報告書を読んでいただくほうが良いのですが、よほどのもの好きでなければ読み込むのはしんどいと思います。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。


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■序章 医療政策会議における共通基本認識
 権丈 善一(慶應義塾大学商学部教授)

・今回の諮問にある「人口減少社会」というのは、医療提供体制のあり方、社会保障政策における優先順位のあり方、財政のあり方すべてに影響を与えるものである p1

・人口減少社会については、2040年以降を念頭に考えていく必要がでてくる。2008年の社会保障国民会議が2025年の医療介護ビジョンを示した時は、17年先を見通していた。ゆえに今は、2040年のビジョンを描いていくのに適したタイミングにあると思われる p1


・日本は、赤字国債を発行しながら、社会保障の給付を先行させるという「給付先行型福祉国家」を作り上げてきた。その過程では、給付のみならず、景気も先取りしてきた p1

・将来世代は国債費の増大による予算編成上の制約を強く受けることになる p2

・成熟社会は、所得を今よりも平等に分配することが経済に活力を与え、労働分配率を高めることと資本の成長は整合性を持ち得る p3

・現代の資本主義は、基礎的消費の社会化を図る社会保障という水路を全国に張り巡らし、その地域地域の田畑に必要な水を流して、土地を青々と茂らせる「灌漑施設」としての再分配政策に頼らなければ成長も難しい p3

・少子高齢化と国民経済の関係を見る指標は、就業者1人当たり非就業者である。人口減少社会で重要な経済政策の指標は1人当たり実質GDPであり、総実質GDPではない p3

・日本の1人当たり実質GDPの伸びは、他の先進諸国と比べて遜色のない伸びを示してきた。ただし、ユーロ圏、アメリカでは、1人当たり実質GDPの伸びに応じて賃金が伸びているのに対して、日本は賃金が伸びていない。問題は、労働分配率の低下傾向、さらには、所得分配の格差のあり方にあることは言うまでもない p3

・健康寿命の指標として(中略)高齢化社会に即した新たな指標が求められている p4

・全世代型の社会保障への転換は、世代間の財源の取り合いをするのではなく、それぞれ必要な財源を確保することによって達成を図っていく必要がある p5


・医師はガス、水道、電気と同じく、人が生きて行くために必須の生活インフラなのであるが、その中でもかかりつけ医は、ACP「人生会議」時代の基礎的な社会インフラであり、その普及が、人生の最終段階におけるQOD(死に向かう医療・ケアの質)を高めるためにも必要とされていることを、日本医師会は、しっかりと国民や会員に広報すべきである p6-7

・高齢化補整を行えば、日本の医療費の対GDP比は、OECD加盟国平均よりもなお低いことは、複数の研究で確かめられている p9

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 トップバッターは今回も権丈先生です。座長でおられますので当然かとは思います。このブログで圧倒的ナンバーワンの閲覧数を誇る「ちょっと気になる社会保障 増補版(最新はV3)」の著者です。

 「共通基本認識」ですので、人口減少社会・財政・国民経済・今後の政策・超高齢社会・医療と介護について、新聞・雑誌・テレビが切り取って取り上げているような内容ではありません。超大事です。

 社会保障・社会保険について議論したり意見を述べる場合にはこのあたりの理解が最低限共有されていないとまったくかみ合いません。そして報道ではこのあたりの理解や背景を感じないことが多いように感じます。


 2年前の「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」から権丈先生のパートを2つご紹介しておきます。
 ・【第6章】分配なくして成長なし
 ・【講演録6】本来の意味で成長戦略

 最近ではこんな対談記事も出ていました。

 ご参考になりましたら幸いです。


 <次回> 第1章 最近のマクロ経済理論と政策の考え方


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