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社会保障教育のワークシート【基礎】身近な社会保障を学んでいく


 厚生労働省webサイトで紹介されている社会保障ワークシートを読みました。

 私は常々「投資教育・金融教育よりも社会保障教育を」と発信しています。難易度が高いとはいえ、義務教育の教科書に”ちょっと気になる社会保障 V3”が採用されてほしいと思うほどです(リンク先は増補版の感想記事)

 前回、第1回目の記事はこちら。
 社会保障教育のワークシート【基礎】社会保障の理念やあり方を考える


 7種類のワークシートを順に取り上げる第2回目です。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。主には「指導者向け活用マニュアル」の文章を紹介しています。

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■ワークシート【基礎】身近な社会保障を学んでいく

<ねらいと学習指導要領>
・社会保障制度とわたしたちの生活がいかに密接に関与しているかを理解した上で、その給付と負担のあり方などについて、幅広い議論が展開できるように作成 p1

<「社会の一員として生きていくこと」とは>
・生活していくこと、やりくりの厳しさを理解させる p2
・厳密にやる必要はなく、やりくりの厳しさが実感できれば良い p2
・個人の力だけでは備えることに限界がある生活上のリスク(病気、けが、老齢、失業、死亡など)に対して、社会全体でセーフティネットを作り支えようとする仕組みが社会保障制度 p3

<わたしたちの生活と社会保障>
・社会保障制度は、高齢期だけではなく、一生を通じて私たちの生活を守っている、身近なものであることを理解させる p4
・直接的な金銭の給付だけでなく、制度があることで、私的な扶養の負担が軽減されているという役割にも気付かせる p4

<ライフサイクルでみた社会保障の給付と負担のイメージ>
・戦後の日本では、右肩上がりの経済成長と低失業率の実現を背景とした安定的な雇用の維持によって人々(特に現役世代)の生活が支えられていたため、社会保障給付の多くが高齢者のための医療や年金、介護に向けられていたため p5
・高齢世代向けの給付は、現役世代にとっては、自分の親を私的に扶養する負担が社会保障制度によって軽減されているという面もある p5
・現在支える側になっている人(世代)も、病気、けが、老齢、失業、死亡などがあった場合には支えられる側になるものであることには留意が必要 p5

<高校生として必ずおさえておきたい“年金の基礎知識”>
・給付と負担の関係がどうあるべきか、自分で考えさせる p6

<高校生として必ずおさえておきたい“公的年金のメリット”>
・年金と貯金を比較することにより、自分の努力だけではどうにもならないリスクに対する備えとして年金制度の利点を理解させる p7
・終身受給・物価変動・障害年金/遺族年金 p7

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 個人的には配布版のp3「ライフサイクルでみた社会保障の給付と負担のイメージ」とp5「高校生として必ずおさえておきたい“公的年金のメリット”」この2つの資料が最高にすばらしい内容に感じました。ぜひたくさんの人に見てもらいたいです。

 社会保障とは給付と負担がセットです。老齢年金で言えば、就業者(現役世代)の負担は今まさに給付を受ける人たち(非就業者:高齢者)のために必要なお金ですし、将来に給付を受ける側からすれば将来に負担してくれる人がいるからこそ給付を受けられるんです。循環です。


 指導マニュアルがあるとはいえ、教える側である教員の方々も初めて知る内容が多いと感じました。
 世にあふれているあおられた情報から公的な仕組みについて懐疑的な考え方を持ってしまっている人(教員)もおられると思うんです。大人(教員)にしみついてしまっている残念ながら不適切な認識が高校生に変な(不安をあおる)情報として伝わってしまわないことを願うばかりですし(勝手な想像ですけれど、公的な仕組みに懐疑的なスタンスの場合にこの内容の授業をしてもらえるとも思えませんけれど…)、この教材で「おおっ!そういうことだったのか!」となっていただける先生方が増えることもあるように思います。この切り口も大事だと思っています。

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 注文をつけるとすれば次の7点です。

■高卒初任給での一人暮らしやりくり(配布版p1)
・「家賃:給料の1/3が目安」「預貯金その他:給料の約10%」
 節約型・普通・贅沢型として目安が書かれているとはいえこれは何を参考にした割合なのでしょうか…
・「*税・社会保険料は想像で記入してみよう」
 初任給15.7万円が設定してあるわけですから、金額情報は埋めておいてほしかったです。
・指導マニュアルで「やりくりの厳しさ」が何度か出てきていますが、ここを強調しすぎると、そのあとの社会保障教育にインパクトが残りにくくなってしまう可能性を感じました。
・「高額療養費制度(負担月額:一般的な所得の人で8万円位)」
 2014年以前に使われていた資料と思われますので致し方ないかなと思いますけれど、2015年以降ここで登場する収入帯(標準報酬月額)の人でしたら57600円です。収入が多くない人はさらに給付が手厚くなっている事実は大事ですので、やはりこれらの資料は数年に1回で構いませんので更新してもらいたいです。

■わたしたちの生活と社会保障(配布版p2)
・年金(老齢給付)だけでなく障害年金も出ているのは良いのですけれど、遺族年金の記載も入れ込んでいただきたいです。

■高校生として必ずおさえておきたい“年金の基礎知識”(配布版p4)
・負担を示す「保険料・国(補助:税)・運用収入」この3つについて割合の情報を含めてもらいたかったです。当然ながら絵柄の大きさのような1/3ずつではありません。
・「免除の対象となる所得の目安」
 この情報は不要かと思いました。当然ながら「所得ベース」の表記なので区分があることが知れるメリットはあるのかもしれませんが、高校生には免除・学生納付特例の存在で十分かと感じます。

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 第2回目として取り上げましたのは社会保障教育ワークシート【基礎】の「身近な社会保障を学んでいく」です。
 生徒への配布資料は5ページ分でワークもあって良いです。皆さま、ぜひです。


 繰り返します。
 配付版p3「ライフサイクルでみた社会保障の給付と負担のイメージ」とp5「高校生として必ずおさえておきたい“公的年金のメリット”」この2つの資料は最高でした。

 私は義務教育におけるまっとうな社会保障教育が強く必要だというスタンスです。

 <次回> 社会保障ワークシート【基礎】年金教材『10個の「10分間講座」』


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