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社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【第4章】対人社会サービス


 2018年4月に日本医師会から発表された医療政策会議報告書の平成28・29年度版「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」を読みました。

 前回、第4回目の記事はこちら。
 社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【第3章】もつれた糸理論


 本当は報告書を読んでいただくほうが良いのですが、よほどのもの好きでなければ(笑)読み込むのはしんどいと思います。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。

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■第4章〔国民経済と経済学〕 「頼り合える社会」の構想――すべてを失う前に…
 井出 英策(いで えいさく)(慶応義塾大学財政社会学 教授)

・古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、国家がなぜ存在するのかという問いに対して、「われわれが生存するための必要によるものであったが、いまやそれはわれわれの生活をよくすることにある」と答えた p31
・「医療を経済に合わせるのではなく、経済を医療に合わせるのが、社会的共通資本としての医療を考えるときの基本的視点である。」「医療の問題をたんに国民医療費の増大とか、財政負担という視点からとらえようとするのは、本末転倒であるといわなければならない」 p31

・統計的に見ると、所得格差の大きい社会は他者への信頼度が低い。これは経験的に考えても自明だろう。「彼らは税のムダ使いをしている」「本当は働けるくせに不正な受給をしている」と疑心暗鬼になる社会にあって、低所得層のための支出が受け入れられるのは容易ではない p32

・戦後日本の福祉国家は、高齢者に比較的手厚い生活保障を行う一方で、現役世代に対しては極めて貧弱な給付しか提供してこなかった p32
・「三本の矢」から「新三本の矢」へ、そしてこども保険から消費税を財源とした就学前教育の無償化へと、現政権は確実に成長から分配へと政策の力点を移していった p32

・ヨーロッパ型の福祉国家とくらべると、日本の財政システムは通俗道徳ともいうべき、独特な文化的特徴を土台としている。それは、勤労と倹約の美徳が前提であり、政府のご厄介にならないこと、困っている人に限ってお金やサービスを提供することを「よいこと」だと考えてきた歴史と符合する p33
・結果、大学の授業料、医療費、介護費、幼稚園や保育園のサービス、障害者福祉、ほとんどが低所得層だけが無料となる制度設計となった p33

・本来であれば、弱者への手厚い再分配は、社会の共通善であるはずだ。だが、弱者への配慮が対立の源泉になるという不幸。生活苦におびえる「大勢の弱者」が「さらなる弱者」を見捨てる不条理。この負の連鎖をいますぐに断ち切らなくてはならない p34
・財政の原理に立ち戻り、子育て、教育、医療、介護など、「社会の共通利益」について、出来る限り少ない自己負担でこれらのサービスを受給できるようにする。しかも、特定の人びとだけではなく、できるだけ多くの人たちを受益者にすることで低所得層の「既得権」を解消する p34
・すべての人びとを受益者にするというとき、ここでは「対人社会サービス」の給付を拡大することを意味 p34

・財源論を各政党が競い合う時代をめざしていくべきだ p35
・あるべき社会を語り、その社会をめざして制度を改革する、そんな情熱を失ったとき、私たちはすべてを失うだろう p36

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 5番手の井出教授のことも存じ上げませんでしたが、税のとらえ方が学びとなりました。前の記事の猪飼教授よりもさらに1歳若い1972年生まれというわけで、これまた私と同じ40代というのも嬉しいです。

 公的サービス(保障)の給付(分配)において、所得制限や所得区分を作るとそれだけ運営者側(公的機関)の手間暇(コスト)がかかります。一律に無償化(もしくは一律に低負担化)してしまえばそのコストは限りなく小さくなりますし、高所得でも低資産の方々や、低所得でも高資産の方々へのサービス提供にも差が生まれないわけですから、公平感が得られます。
 高所得・高資産、高所得・低資産、低所得・高資産、低所得・低資産、ざっくりわけて4区分の方々から公平に負担(納税)してもらうには、税の専門家ではない私で思い当たるのは消費税しか無いように感じます。

 集まったお金をお金で配るのではなく、子育て・教育・医療・介護などの「対人社会サービス」で配る(分配する)仕組みは、これにより直接的に雇用(需要)を生み出します。経済の面でも大きな役割だと感じます。


 お名前を検索するとこんな記事が出てきました。


 なかなか興味深い記事でした。こういった主張に実現可能性があるのかどうか私にはわかりませんが、議論の出発点としてわかりやすく、現役世代として賛同できるものでした。


 <次回> 第5章〔国民経済と経済学〕 成熟社会の経済と処方箋


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