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”がんになったら知っておきたいお金の話”読みました。


 ”がんになったら知っておきたいお金の話 ~看護師FPが授ける家計、制度、就労の知恵~”(2019年1月28日 初版第1刷)を読みました。

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 著者はファイナンシャルプランナー(FP)の黒田ちはるさん。黒田さんとお会いしたことはありませんが、facebookで検索してみたところ共通の知り合いが何人かありましたので、いずれお会いする機会もあろうかと思います。

 ツイッターで存在を知り、やり取りが何度かありました。



 こんな感じの嬉しいきっかけもお聞かせくださり、ご著書を読まねばと思いました経緯です。

 このブログに訪問くださっている皆さまはご存知のこととは思いますが、一応リンクをご紹介しておきます。
 <ブログカテゴリ> 精巣腫瘍患者友の会(J-TAG)ピアサポート
 早いものでお手伝いを始めまして丸7年たちました。


 いつも通りアウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

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■プロローグ 看護師FPってなに?

・決意したは良いけど、ここで家族の大反対です。「せっかく看護師になったのに」「そんなの誰もやっていないし、需要はあるの?」(中略)あんなに反対していた家族ですが、今では一番の理解者です。 p12-13
・がん患者に対応できるFPはまだまだ少ない p20~
・全国の患者さんが近くの病院でFPによる家計相談が気軽に行え、経済面のつらさも早期に軽減でき、よりその人らしい生活が送れることが看護師FPとしての目標です。 p23


 冒頭の通り、特定のがん種とはいえ私もがん患者さん・経験者さん・そのご家族の方々のサポートを丸7年以上経験しています。元々看護師でおられたことがFPとして相談をお受けするなかでどれだけ優位に働くのか、相談を依頼する側にとってどれだけ安心感につながるのかは正直いってわかりません。
 間違いなく言えるのは、ご自身でも書かれているように「看護師FP」という存在は稀有でしょうし差別化は明快です。

 医療側の知識があることはもちろん良いことだとは思いますが、そうでなくとも何も問題ないと感じますし、むしろそもそものFPとしての最低限の対応幅をカバーできているのか、さまざまな立場の人と正面から対峙できるのか、その役割を継続できるのか、このあたりが大事だと7年の経験で感じる次第です。


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■がんになったらお金はどうすれば良いの?

・治療中の生活設計表 p42~、350~
・標準治療 p40、50~


 いわゆるキャッシュフロー(CF)表というお金の流れの推移表は年単位で作成します。これを基本に治療のスケジュールなども含めて月単位でまとめる「治療中の生活設計表」、良いものだと思いました。注釈(p44・352-353)を使っての解説もまっとうです。当面のお金のやりくりで悩まれる場合には大事な視点だと感じました。

 標準治療の解説もさらっと書かれていて良いです。患者さんをサポートする立場のFPも発信すること、大事です。
 <過去参照記事>
 ・”医療否定本の嘘”読みました。
 ・”「ニセ医学」に騙されないために ~危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る~”読みました。


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■第1章 自営業(個人事業主)のケース
■第2章 働き盛りの会社員のケース
■第3章 60代前半のケース
■第4章 専業主婦のケース
■第5章 共働きのケース
■第6章 つらくて退職を検討しているケース
■第7章 再発語見通しが分からないケース
■第8章 一人暮らしのケース
■第9章 積極的な治療を終了したケース

 制度を順に説明するのではなく、ケーススタディーですので読み進めやすいです。当事者の方々も手に取りやすいと思います。
 細かいことを言えば制度説明も各章に散らばっていますので、巻末に索引があれば良かったのかもしれません。詳細な索引ではなく、大項目だけでも問題なさそうです。
 

 以降は細かいつっこみです。

・住宅ローン p183~

 現時点でも金利3.05%で継続して借りておられるケース(しかも現時点で借り換えの可能性のある人)ってかなり珍しいパターンのように感じます。もちろん確認することは必要です。私も確認します。でも、あまりに効果の大きい希少な事例を使うのは期待を持たせてしまう分、本の意図とは異なってしまうように感じました。


・家賃を支払うことが難しい方の相談窓口 p245~

 FP資格をご存じない方々への念のための説明です。この項目の内容をFPは学びません。いわゆる福祉事業、自治体の役割です。
 幅広い知識を持っているFPが提供できることは十分に意味があります。案内できるかできないかで言えば、できるほうが相談者さんに役立つのは間違いないでしょう。このあたりは黒田さんならではなのだと思いました。


・介護保険について p320~

 章立ての都合上「積極的な治療を終了したケース」に書かれているわけですが、当然ながらそうでなくても該当する可能性もあります。障害とは言葉を換えれば「身体の機能性が損なわれている」ということだと私は認識しています(正式な定義ではありません)。
 若くで長期間にわたる治療を継続した場合など「積極的な治療を終了したケース」でなくとも、該当することは考えられます。ケーススタディーで本を書くことの難しさだと感じました。


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■コラム

⑤「保険を売っていない、がん患者さん専門のFPってどんなことをしているの?」 p215


 コラム5つもボリューム満点です。
 ⑤を取り上げますが、看護師資格をお持ちでもこの質問を受けられることがあるのですね。一般の場で私のことを紹介くださる際に「ファイナンシャルプランナーの伊藤さんです」とだけの場合、いまだにどんなふうに伝わってるかなと思いを巡らす場面が多いです。「保険の人ですよね」と言われる(思われてる?)ケースが多いからです。

 地道にがんばらねばと思います。黒田さん、お互いにがんばりましょうね。


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■エピローグ 一人で悩まない、困ったときの相談相手探し
■おわりに

・がん患者さんの相談に慣れているFPはさらに少なく、実際に病院で相談を受けているとなると、全国にほんの数人という状態 p344
・この本で一番伝えたかったのは、「がんになった後もお金の面でできることはたくさんある」ということ p355


 私からの希望はいつも書きますこの文章です。

 現在の私は患者会さんを通じたボランティアです。近い将来、がん相談支援センターなど患者にとって比較的足を運びやすい場所で、専門家としてのファイナンシャルプランナー(FP)が当たり前に相談員として病院に採用され、本人やその家族がいつでも相談を受けられるような社会になっていてもらいたいと強く願っています。

 この分野へ私が注げる時間は限られています。患者会での実績作りで手一杯です。黒田さんの活躍で大きく社会が変わることを強く願っていますし、大応援しています。(他力本願ですみません)


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 患者さん本人やそのご家族が自分の力でこの本にたどり着けるケースは少ないかもしれません。どちらかと言えばFP側がこの本の情報・知識を得て、日々の相談でがん患者さんやそのご家族を対応する場面が現れたときに役立たせるケースのほうが多いのではないでしょうか。また、黒田さんのFP相談を受け、手に取ってみようと思われるケースも多そうです。

 繰り返しとなりますが、制度の解説ではなくケーススタディーでまとめられていて読みやすいです。お勧めです
 
 

 長文をお読みくださり、ありがとうございました。



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