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平成30年度税制改正大綱を独断と偏見の塊で書き出しました。


 2017年12月14日に自由民主党のサイトで公開されました。

 12月10日あたりが通常なので、昨年に引き続き今回もイレギュラーなしだったようです。
 平成30年度 税制改正大綱
 原文はPDFで132ページです。ボリューム減ってます。

 この大綱はほぼ確定の内容であると言えますが、あくまでも現時点における改正見込みであって、現時点においては確定していないものもありますのでご注意ください。
 実際に改正された内容は財務省のwebにまとまっていますのでご参照ください。
 各年度別の税制改正の内容

 なお、このblogでは私の個別相談で特に関わりそうな内容のみ、独断と偏見で抜粋します。

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【平成30年度税制改正の基本的考え方】

 いわゆる前段で気になった文章やキーワードです。

・人生100年時代を見据え
・働き方の多様化
・税務手続の電子化等を一層推進

・消費税10%への引上げを平成31年10月1日に確実に実施するとともに、あわせて実施される低所得者への配慮のための軽減税率制度について、安定的な恒久財源を確保するため


 消費税、悩ましいですよね。
 個人的には消費税のアップは時代の流れとして致し方ないことだと思っていますが、軽減税率だけは本当に勘弁してもらいたいです。制度の複雑性はコストを生みます。せっかくの税収アップ分が相殺されてしまうコストは不毛です。
 軽減税率ではなく、低所得者向けの給付などで補ってもらいたいです。ただ、このブログでは時々書いていますが、単に低所得者というくくりはもう時代に合っていません。極端に言えば、低所得だけど超資産家には給付や軽減があり、高所得だけど貯蓄ゼロの方々には給付や軽減はない、これは厳しいです。
 <過去参照記事> マイナンバーに思うこと<その3 将来のために>


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■1 個人所得課税の見直し
(1)平成30年度税制改正における対応
 ・多様な働き方
 ・人生100年を生きる
 ・子育てや介護に対して配慮する観点

(2)今後の見直しに向けた基本的方向性
 ・老後の生活など各種のリスクに備える自助努力を支援するための企業年金、個人年金、貯蓄・投資、保険等に関連する諸制度のあり方について、社会保障制度を補完する観点や働き方の違い等によって有利・不利が生じないようにする

 
 前段だけで「多様な働き方」「人生100年」が何度も登場しますし、重視したいスタンスはよく理解できます。でもこれらは「税制改正」だけで成せるものではありません。何もかもが小手先の対応に見えてしまう面も否めないのではないでしょうか。


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【個人所得課税】

■1 個人所得課税の見直し p17~

(1)給与所得控除等
(2)公的年金等控除
(3)基礎控除

 平成32年(2020年)から適用です。

 細かいことは省略しますが、(1)と(2)を10万円引き下げ、(3)を10万円引き上げる。
 給与所得者(会社員・公務員)や年金生活者には何も影響はありません。
 給与を受け取らない自営業者は控除が増えますので、税が減るということになります。

 ただし、自営業者では気をつけないといけないケースがあります。(5)青色申告特別控除です。p21のイ・ロを満たしていないと65万円から10万円の引き下げがあります。元々、青色申告の要件を満たしている人であれば問題ないとは思います。

 控除とは所得を減らす仕組みです。
 所得とはもうけです。もうけを減らす仕組みです。
 税金が直接的に減るわけではありません。
 多様な働き方への配慮だとしても、10万円の控除は所得が低い人(税率5%)と所得が高い人(例えば税率20%)では、得られる効用(税軽減)に違いがあります。


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■4 森林吸収源対策に係る地方財源の確保 p32~
 
 森林環境税(仮称)だそうです。

 平成31年度の税制改正で創設し、平成36年(2024年)度から年1000円が住民税と一緒に課税されることになるようです。住民税が1000円増えても気がつかない人多そうですよね…。


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■6 その他 p38~

 平成32年10月1日以降に提出する生命保険料控除・地震保険料控除・住宅ローン控除の年末調整手続きで、「電磁的方法により提供する」方法が可能となります。

 各金融機関が具体的にどのような対応を打ち出してくるのか興味深いです。



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【資産課税】

■4 土地の相続登記に対する登録免許税の免税措置の創設 p50~

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 この問題は大きいです。まず第一段階のように感じます。とりあえず平成30年4月1日から3年となっていますが、長く続くのではないでしょうか。

 一応書いておきますが、この期間に発生した相続(死亡)で今まさに引き継ぐ人の免税ではありません。この期間に亡くなられた方がさらにその上の世代などから名義を変えていなかったことに対する手続きです。


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■5 租税特別措置等 p50~

〔廃止・縮減等〕

・相続税の小規模宅地等

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 普通に生活している方々にとっては、①ロと③が大事です。
 何とも表現が難しいのですが、文言の穴をついて節税を進める方々が①イを使っておられたようで、その穴が埋まったということです。

 こうして文章が増えていかないといけないのははっきりしていって良いのだと思いますが、何事も性善説に基づいていますから悩ましいですよね。


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■6 その他

〔固定資産税・都市計画税〕 p69~

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 個人的に生産緑地の件は興味を持っています。

 参照webです。
 住宅地価に2022年問題「生産緑地」が下落要因に「農業縛り」解け大量供給か



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【消費課税】 p92~

■1 観光立国・地方創生の実現 p92~
(1)国際観光旅客税(仮称)の創設

 出国1回につき1000円取られることになります。
 平成31年1月7日以降に適用です。


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【納税環境整備】 p118~

■5 その他
(1)国税のコンビニ納付 p126

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 QRコードでしたら便利ですよね。


(6)税理士試験の受験料

 税制改正大綱に載るんですね。
 1科目3500円から4000円に値上がりするそうです。



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 その他、ファイナンシャルプランナー(FP)のテキストに出てきそうな内容です。

 p30
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 p61
180228_04
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 p63
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【検討事項】 p130~

■1 年金課税

 今般の公的年金等控除の見直しの考え方」という文章が加わった以外は、これまで3年と同じです。
 ということは今回の変更は第一歩目であり、これからも変わっていく可能性を感じます。ひと安心です。


■4 寡婦控除について3年間同じ文言でしたが変わりました。

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 次回の大綱の内容も気になるところですが、いわゆる母子家庭は低収入のケースが多いのが実態です。税制でいかに対策を取られたとしても、そもそも所得税を納める域に達していないケースや納めていても多くないケースのほうが多いはずです。
 ここを税の観点からどのように変更を加えるのか。次回を楽しみにしたいと思います。

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 なお、平成29年度の税制大綱を取り上げたblogはこちらです。
 平成29年度税制改正大綱を独断と偏見の塊で書き出しました。

 長文を読んでくださり、ありがとうございました。


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