”株、投信を買うなら必見!税金がタダになる、おトクな「NISA」活用入門”(2013年7月25日第1刷)を読みました。著者はいつもお世話になっている
ファイナンシャルジャーナリスト竹川美奈子さん。
NISA(ニーサ)とは少額投資非課税制度、日本版 Individual Savings Account (個人貯蓄口座)の略称です。
株や投資信託を売却した際の収益(譲渡所得)および株や投資信託から出てくる配当金(配当所得)は本来20%課税されるところ、2013年末までは10%の軽減税率が適用されています。(復興特別所得税はここでは触れません)
この軽減税率は長い期間、延長が繰り返されてきたのですが、2013年12月31日をもって終了となり、その代わりに登場するのがNISAです。このblogでは制度の説明は取り上げません。この本や各種サイトをご覧いただきたいです。
このblogを書いている時点でNISA開始の2014年1月1日まで5ヶ月を切っているわけですが、実はまだよくわからないこともいくつかある不透明な制度です。不透明なのですが、基礎的な部分はおおよそ明らかになっています。今回の本はその内容がまとめられています。
タイトルだけを見ると、制度の単なる解説本かと思ってしまいそうですが第2章「NISAよりトクなことも!?税金の優遇制度を徹底比較!」では、竹川さんの真骨頂といえる内容にもページがしっかりと確保されています。ここが本当にたいせつです。
前段が長くなってしまいました。いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。
------------------
■第1章 少額投資非課税制度(NISA)ってなに何!?
・(非課税期間である最長5年経過後に)課税口座(特定口座など)に移す場合 p38
制度が恒久化されておらず期限がありますので、特に注意の必要な項目だといえそうです。特に元手を下回った際に課税強化となってしまう点については、p39のわかりやすい図でしっかりと確認してもらいたいです。
----------
■第2章 NISAよりトクなことも!?税金の優遇制度を徹底比較!
・利用できる「税金の優遇制度」を知ろう! p58
・トクする!使える制度早わかり p59
・個人事業主やフリーランスの選択肢は多い! p75
私が竹川さんをいつも最大限にお薦めする最大のポイントはこの章に集約されていると言ってよいと思います(偉そうに書いてしまい申し訳ありません…)。
NISAそのものを把握することは将来の資産形成を考えるうえでもいいことだと思います。しかしながらそれよりもたいせつなことは「”NISAありき”ではない(p54)」資産全体を考えたうえでの運用であったり、利用できるその他の優遇制度があればそちらを活用するということです。
手前味噌ではありますが、これらの選択において(一般の)個人では情報をつかみきれないことも多々あるかと思います。そういった際に役立てるのがファイナンシャルプランナー(FP)でありたいです。
とはいえ、FPにもさまざまな立場があります。有利な制度選択や将来のことを一緒に考えるだけで金融商品の販売につながらなければ、収益の上げられないFPが多いのも1つの事実でしょう。それが良いとか悪いではなく、立場の違いを理解したうえでFPを活用していただきたいですし、そういったところまで知ったうえで活用していただける社会にしていきたいです。
----------
■第3章 NISAをどう活用する!?
・これから投資をはじめようと思っている人はどう活用するか?(仕事や趣味等々で忙しくて、運用に時間をとりたくない人を含む) p92~
・ここまでは、NISAのはじめ方について説明してきましたが、「出口」についても考えておく必要があります。 p100
・すでに投資している人(投資経験者)はどう活用するか? p101~
実際に低コストな投資信託商品の例も挙げて解説されています。NISAは(比較的)長期の資産形成のための制度ということもあり、短期間での売却は制度の利点を長く使うという点で有利に働きにくいです。だからこそ、商品選択はたいせつですし手数料の比較も重要です。
----------
■第4章 注意点がいっぱい!金融機関の選び方
・10年で金融機関を選べるのは3回だけ! p116
・現状の制度では、一度NISA口座を開設すると、金融機関の変更をするのが難しい設計になっているのです。
個人の主観を書きます。
現時点において、NISA口座を銀行で開設することは間違いなくお勧めできないです。銀行と証券会社の比較は、p121にまとめられています。
そして、証券会社でも手数料の安い(コストの低い)ネット系をお勧めすることになりそうです。その中でも有力なのは2社程度に絞られそうです。
品揃えが豊富とか、有名だからなどが最大の理由ではありません。コストの低いことは必須ですが、これから明らかになっていく制度の実運用面での課題に対して迅速かつ柔軟に対応してくれそうな雰囲気をこの2社には感じているからです。
2013年10月1日から口座開設がスタートします。制度そのものは2014年1月1日からスタートです。でも、NISA口座における年間の購入限度額は100万円です。必ずしも1月1日の時点でスタートできていなくても問題ないと考えます。
専門家の方々は「ギリギリまで悩みましょう」「早く決めなくてよい」という意見で横並びに感じます。もちろんそうである事実は間違いないです。誰かが動き出したときに一斉にその情報だけに飛びつき鵜呑みにするのではなく、世の中の動きに多少遅れてしまったとしても専門家の意見も比較したうえで選択したいですし、何でしたら制度が本格的に動き出してから口座を開設されても問題ないと感じます。
後出しじゃんけんのようでずるいと思われるかもしれませんが、制度利用を誰かと競争しているわけではありません。半年や1年の様子見だってありだと感じています。
----------
■第5章 口座開設から取引まで
かゆいところに手の届く内容です。手続きの段取りでわからなくなればこの章を確認すると解決します。わずか10ページです。しっかり確認したいです。
そして、p142のコラム「大きく変わる投資税制」もありがたかったです。
----------
■最終章 こんなときはどうしたら?Q&A
・Q6 2014年7月に投信や株を購入したら、5年後の2019年6月まで非課税?
A 非課税期間は2018年12月までです p151
特にこの「最長5年」の考え方は意識しておかねばなりませんし、Q12とAに書かれているとおり制度の改正はたくさん出てきそうです。しっかりと追いかけていきたいです。
------------------
この本の発売日と前後して、新たな不明点が出てきていたようです。
NISA口座での投信積み立ての課題(著者である竹川美奈子さんのblogです)
本そのものは基礎的な考え方がまとめられているという部分でとてもわかりやすく読みやすいです。しかし、細かな(かつ最新の重大な)内容は、日々チェックしていくしかありません。
私自身は専門家として自分で情報を得ていくことのがもちろんたいせつなのですが、竹川さんの発信されている情報をつかみ続けていくことも必須です。個人の方々にとっても竹川さんの情報は知っておかれて問題ないです。
facebookページがオススメです。
今年の6月14日には金融庁の担当者さんをお招きしての勉強会も開催しました。
その時の記録はこちら↓です。
「NISA(日本版ISA)の勉強会・意見交換会【コツコツ京都】」開催報告です。 さまざまな情報を加味して「全体最適(p54)」な制度利用についてアドバイスできるFPでありたいです。
------------------
フィデリティ証券主催「
少額投資非課税制度(ニーサ)を正しく知るための総括セミナー」が9月に開催され、10(火)東京・11(水)大阪いずれも「退職者世代向け」の昼の部と「現役世代向け」の夜の部があり、竹川さんも登場されるようです。
セミナーにしては珍しく、講演が無くて1時間半のパネルディスカッションのみのようです。決まりきったお話にはならないかもしれませんので、とても興味深いです。ご興味お持ちの方は参加無料とありましたのでぜひ足を運んでみていただきたいです。
個人的に特に注目しているのはセミナーと同時開催の「個別相談会」。フィデリティ証券の営業担当さんもしくは電話窓口の担当さん等が対応されるのでしょうか。
「制度や口座開設方法がわからないなどご質問にお答えします」となっていますが、各回1時間もの無料個別相談です。こういった場での1時間だと質問だけだとは思えません。相談者側からどんな質問が出てくるのか、対応者側はどんな展開を準備されているのか、もしくは実際の口座開設の手続きまで進められてしまうのか、とても興味深いです。
------------------
話がそれてしまいました。
本書はNISAとその周辺情報の入門書です。とってもお勧めです。

金融機関や金融商品の選択をはじめ、投資や運用は自己責任でお願いします。
竹川さんの本は以前にも感想を書いています。
・2013.05.22
”一番やさしい! 一番くわしい!はじめての「投資信託」入門”読みました。・2013.03.31
”金融機関がぜったい教えたくない年利15%でふやす資産運用術”読みました。・2012.08.01
”あなたのお金を「見える化」しなさい~ビジネスパーソンのための新お金管理術~”読みました。・2010.08.10
「投資信託にだまされるな!」読みました。 長文を読んでいただいてありがとうございました。
コメント