”金融機関がぜったい教えたくない年利15%でふやす資産運用術”(2013年1月7日第1刷)を読みました。著者はいつもお世話になっている
ファイナンシャルジャーナリスト竹川美奈子さん。
まずはじめに。
この本は、確定拠出年金「個人型」の解説本です。
確定拠出年金個人型の対象者については
厚生労働省「確定拠出年金制度」のサイトの下にある囲み部分に記載があります。
改めて書き出すと、
・企業年金制度の導入されていない会社員(厚生年金)の人
・自営業など国民年金の第1号被保険者の人
が対象となります。
反対に対象にならないのは、
・企業年金制度の導入されている会社員(厚生年金)の人
・公務員(共済年金)の人
・厚生年金や共済年金の人に扶養されている配偶者(国民年金の第3号被保険者)
です。
残念ながら対象とならない人が多いのも事実でしょうし、意外と対象となる人が多いと受け取る人もいるのではないでしょうか。
いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。
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■第1章 公的年金だけでは豊かな暮らしはのぞめない!
竹川さんのことを本当に大好きな私なのですが、その第1の理由は、公的年金をはじめとした社会保障全般や企業の退職金(企業年金)など福利厚生の仕組みにも精通しておられることです。実際に企業研修の講師をいくつも務めておられますし、これまでの著書でもしっかりと触れておられます。
もちろん一概には言えませんが、投資や運用系の専門家と呼ばれる方々はこのあたりについてあまり強くない印象があります。でも竹川さんは違います。だからこそ情報の信頼性が圧倒的に増しますし、確定拠出年金の背景となる第1章もたくさんの人にしっかりと読んでもらいたいです。
ただし、本のタイトルもそうなのですが、良くも悪くも見出しが刺激的なのがこの本の特徴です。
竹川さん自身もさまざまに発信されていますが、特にタイトルの決定権は著者に無いそうです。不安をあおるやり方は好きではないとご自身もおっしゃっていることを付記しておきます。
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■第2章 金融機関の売りたい「年金」商品は買ってはいけない!
この章の内容は、第1章の終わりに前振りがあります。長文ですが引用させていただきます。
「「公的年金が不安」とか「老後資金は足りるだろうか」といった私たちの不安心理につけこんで、金融機関がよくセールスしている金融商品にひそむワナについて詳しくご説明します。そして、ひどい金融商品を間違ってつかまないようにしていただきたいと思います。」p45
明らかにこれは…と一目でわかる「ひどい金融商品」も確かにあります。
実際にはこれらをつかまされている方々もおられますので私なりに逃げ道を書かせていただきますが、内容を理解して納得したうえでつかんだ金融商品であれば、それはそれで悪くなかったんだと思っていただきたいです。
わからずに勧められるままというのは残念ながらフォローしにくいです。
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■第3章 年金資産は確定拠出年金を使ってつくる!
この本のタイトルにある「年利15%」については、「はじめに」できちんと説明されています。
確定拠出年金の掛金(積立)全額が所得控除の対象となるため、住民税10%と少なくとも所得税5%をあわせた15%の税金が還付される(戻ってくる)ので、15%のリターンが得られるという意味です。その詳細も書かれているのがこの第3章です。
そして、統計上は会社員のおおよそ2人に1人、もちろん自営業者は全員この制度を使えますので、合計で約3600万人が対象であるにも関わらず、現在の利用者(加入者)は約14万人、たったの0.4%であると書かれています。
私も利用しています。
「掛け金を支払っていた期間が長いほど非課税枠が大きくなって、節税効果も大きくなります(101ページ参照)。ですから、最初は少額でもいいので、早い時期から個人型DCに加入することをおすすめします。」p111
将来に向けたコツコツ積立の第一優先になるのが、確定拠出年金個人型です。
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■第4章 どんな金融機関を選べばいい?
確定拠出年金個人型の最大のハードルは加入手続きがわかりにくい・時間がかかるということであり、そもそもどこで手続きができるのかという疑問だと思っています。
具体的な金融機関名まであげられて解説されているところがこの本のものすごいところです。いくつか候補が挙げられており、特に手数料では金融機関によって確かに違いはあります。
でもこれらの候補の中で悩み、なかなか始められないというのは本末転倒だと思います。乱暴な書き方をしますが、他の金融商品などを使って資産形成をすることに比べれば誤差の範囲だと個人的には感じます。
もちろん個別に相談を受ければ、よりよい選択肢はお伝えしています(という私の営業です、すみませんm(_ _)m
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■第5章 確定拠出年金はこう活用する!
掛け金(拠出金・積立金)の配分方法、資産配分の調整(リバランス)、受け取り時期がついてきたときに知っておきたいことがしっかりと書かれています。
「個人型DCは60歳以降、掛け金を入れることはできないものの、70歳まではそのまま運用を続けることができます。ですから市場が回復するのを待つということもできるのです。」p174
ここもとてもたいせつな部分です。
そして、あわせて知っておきたいのは60歳以降70歳までの手数料のことです。掛け金を入れられなくなると、毎月(毎年)かかってくる費用が上がります。
しかし、具体的にはそれぞれの金融機関で異なりますけれど実は長い期間積み立てていれば、その総額に比べれば非常に影響の大きくない手数料です。このあたりも知っておきたいところです。
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■第6章 【実践編】口座開設から取引までの疑問点にお答えします!
実は一番たいせつなのが制度的に確定拠出年金を続けられない状況になってしまうケースのこと。
・運用指図者になってしまったら どの金融機関がいい? p146~
・Q 個人型DCを途中でやめることはできますか? p187~
やめることができるケースとは、反対に書けばそこに該当しなければやめられないということです。毎月の掛け金を出すことのできない状態が長く続いてしまう可能性がある場合は、この制度の活用するメリットがなくなってしまいます。この点は特に注意が必要だと感じています。
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私が普段お受けする相談の中で、投資や運用に関する相談はあまりありません。私の露出スタイル的に投資や運用を掲げていないからでしょう。
しかしながら、公的年金については「ねんきん定期便」から触れる機会が多く、その流れで将来に向けたコツコツ・つみたて投資に関する話題提供は必ず出てきます。
そして、その第一優先となるのがこの確定拠出年金制度です。税制メリットの大きさを考えれば当然といえます。個人型を始めることのできる人はそれなりにおられます。冒頭に書きました該当する方々には必ず読んでいただきたい1冊です。
金融機関や金融商品の選択をはじめ、投資や運用は自己責任でお願いします。
竹川さんの本は以前にも感想を書いています。
・2012.08.01
”あなたのお金を「見える化」しなさい~ビジネスパーソンのための新お金管理術~”読みました。 ・2010.08.10
「投資信託にだまされるな!」読みました。 昨年、京都で竹川さんが勉強会でお話された記録もまとめています。
・2012.10.29
「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べin京都vol.5一周年!」開催報告です。 何かの参考になりましたら幸いです。
長文を読んでいただいてありがとうございました。
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